舞われまわれ | ナノ







「中学生の、ですか?」
「うん、いろいろあって学校…碌に行けてないんだよね。」

夜、もうソルベに教えてもらうことが出来ない数学を忘れないうちにと、一人で勉強していると風呂上りのフーゴが物珍しげにやってきた。
なんとか算数はクリアし、数学の教科書を開くまでに進歩したわけだが、負の数の計算は今までと違って想像しづらくて四苦八苦である。
しかもxだとかyだとか、今までつるかめ算でやってきたものがアルファベットに変わってしまい、てんやわんやしてしまう。
悲しい哉、現在私のノートは赤のバッテンだらけである。

「そういえばフーゴは中学生?勉強は困らないの?」
一緒に考えてくれないかな、なんて考えは次の一言で崩れ去る。
「一応、大学レベルまではマスターしてます。」
「…は?」
聞き間違い、じゃないよね。



「飛び級…首席…IQ152…?…何よそれ。」
テレビの中のドキュメンタリー、いやドラマの中の登場人物かよ、とつっ込みたくなるくらいハイスペックな新入りである。
「別に信じてもらえなくてもいいですけど。」
「いや、妙に説得力あるのがまた、悔しい。」
体からあふれ出る気品は教養の数々からだったのね!
「そんなお坊ちゃまがなんでまたこんな…。」
家庭に問題があったようには聞こえなかったけど、いや期待されるってのも大変なのかもね。
私はされたことないから分からないけど…ってなんか凄い自虐的。

「別に、それは…。」
「あ、興味はあるけどそこまで気にならないから言わなくていいよ。それよりそんな頭いいなら教えてよ。」
「…あなたって自由な人ですね。いいですけど、何処です?」
「やった!言ってみるものね。」


そんな風に、軽くお願いしたことを後悔するのに時間はかからなかった。