舞われまわれ | ナノ







「そういえば、チームメイトは他にはいないの?」
「入る予定だが誰がというのはまだ話が来ていない。入団試験の結果待ちか、他のチームからの異動か。気長に待つとするさ。」

ここにきて二日目。
事務所の住居スペースに住むことにした私は、先ほど届いた荷物の整理をしながら手伝ってくれるブチャラティに聞いてみる。
すると聞きなれない言葉が耳に飛び込んできた。

「入団試験…?」
そんなものあったんだ。


「なるほど、だからスタンド使いばっかなのね。ブチャラティも組織に入ってから使えるようになったってことか。」
「そうだ。」
「じゃあ最初は戸惑った?いきなりだもんね。」
「ああ、自分の能力、射程距離は経験で知るしかなかった。幸い俺は視覚的にわかりやすい能力だったがな。」
「そっか、なら入団試験やってる人もこれからが大変なんだね。」
「苦労はすると思うぞ。こればっかりは誰も助けられない。」

うーん、気付けばそばにいてその存在も能力も当たり前だった私には想像もつかないことだ。

「どんな人だろうね。あんまり年上でも気まずいよね。」
ペッシみたいなタイプならいいけど、強面のお兄さんとかだったら指示するのも気が引ける。

「俺はこの世界では長いほうだからな。その可能性もあるかもしれない。」
「えー…。」
年上強面な後輩なんて気まずいのは嫌だなぁ。
異動だったら私よりも先輩って可能性もあるのか。
それならまだ気が楽だろうか。

ジリリリリリリリリリリリリリリ…

電話が鳴っている、たしかリビングに置いてあっただろうか。
電話の位置を思い出している間に、ブチャラティはリビングに向かってしまった。

本来こういうのは私がやるべきなのだろう。
リーダーにやらせてはまずい。
今度電話の応対の仕方を勉強しなくては、そう決心してまずは眼の前の荷物をどうにかするべく手を動かすことにする。


暫くして戻ってきたブチャラティは心なしか嬉しそうだった。
「何の電話だったの?」
「新入りだ。先ほど試験を終えたらしい。」
「そうなんだ、それでどんな人?」
「男だとは聞いている。後、名前をな。もう向こうを出たそうだから直にこちらにやってくるだろう。俺は下で待っている。ひと段落したらお前も来てくれ。」
「わかった。すぐ行くね!」
この箱が終わったら合流しよう。

「わ、お待たせしちゃった感じ?」
下に行くと、ブチャラティの向かいに見慣れない顔の少年が一人いた。
想像よりずっと若いのでもしかしたら違うのかもしれない。
私より年下に見える、気がする。

「えっと、新入りさん?」
「そうだ。あいつはマキナだ、フーゴ。」
「フーゴといいます。よろしくお願いします、マキナ。」
「うん、よろしくね。」
眼の前の少年は上品に笑った。