舞われまわれ | ナノ
(あー、俺何してんだろ。)
彼女に当たったって意味は無いのだ。 現実が変わるわけでもない。 俺に出来ることはもう何もなく、ことは見送るしかないところまで来ている。 それでも、やはり面白くない。 自分の世界が壊れることは耐え難い。
思えば彼女がここにいたことが間違いだったんじゃないだろうか。 そう思えば楽になる気がして。 彼女はこちら側にふさわしくない人間なのでは、そう思い始めればそう思えなくもない。 スタンド能力や身体能力が適していたというだけで、根っこのところは俺たちなんかとは別世界なんじゃないか。
もしそうなら、あまりにも…あまりにもだ。 俺たちは決して届かない、同じ場所には立てない人間を仲間と称してきたことになる。 なんだ、滑稽だな。 どうしようもなくダサい。 彼女をこの暗闇から出したくない。 けれども、彼女はあちらの方が似合うのだろう。 俺らがいるのは暗闇の暗闇。 底辺のそのまた底辺。 やんなるなぁ。
そんな卑屈になった俺の気持ちを察してか否か、彼女は怪訝そうに、(贔屓目に見れば心配そうに)俺を見ている。 やっぱり彼女はこちら側の人間ではなかったのだ。 遠い世界の人で、たまたまちょっと間違いでこちらに来たのに俺らはあんなに騒いでしまって。 こうやって、手を伸ばしても届く相手ではなかったのだ。 ドブ臭いこの場所から見るにはあちらは眩しすぎて手を伸ばしても届かないのだ。
「どうしたの?」 「え…。」 随分と高い体温を手に感じた。 俺より小さくて柔らかい手が無骨な俺の手を包み込んでいた。
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