舞われまわれ | ナノ
年もあけたある二月の寒い晩、リーダーから部屋に来るよう呼び出しを受けた。 何かしくじっただろうかと内心ビクつきながら訪れたそこで渡された一枚の紙。
「ど、どういうこと?」 「文字通りの意味だ。」 「私、足手まといだった?」 「上からの指示だ。」 「そんな…。」
思わず手に力が入り、紙はぐしゃぐしゃになる。 別にぐしゃぐしゃになったところでもう内容は変わらないからいいのだけれど。 いや、もしこの内容が変わるのなら私はいくらでもこの紙をぐしゃぐしゃにしてやる。
渡されたのは、 私に対しての異動の告知書だった。
「普通のチームって何よそれー!!!何してんの?意味わかんない!もっとわかりやすい名前はないの!?」 「あれだろ、商店とかの介護料とって面倒見るって言う…」 「それくらい知ってるわよー!!」 「理不尽だ。」
メンバーには夜全員揃ってから話すとリーダーは言っていたが、あんまりにもモヤモヤするものだからイルーゾォに愚痴っている。 「いいんじゃないか?暗殺よりも断然安全だし、上がりも定期的に入るから安定性もある。好条件じゃないか。」 「イルーゾォは私がいなくなってもいいっていうのー!?」 「そんなこと言ってないだろ、でも上の決定は覆せないんだから仕方がないし。変なところに飛ばされるんじゃなくて良かった、ってほら、泣くな。」 「泣いてないー…。」 「涙目なんだよ。これ使え。」 差し出された青いハンカチをふんだくり目元を拭う。 「皆と、会えなくなっちゃうのかな。」 「まぁ俺たちの評判もあるし、無関係になったなら関わらない方がいいと思うぜ。上が必要と判断したらアジトも移るかもな。」 「む、無関係…。」 そんな、引越しまで。 それじゃあ本当にお別れじゃないか。 「嫌だなぁ。」 「…俺だって嫌だよ。」 「し、師匠ぉ〜…ありがとぉおおお…」 「こら、鼻水引っ付けんな!」 抱きついたら引っぺがされた。
「今生の別れを…」 「…遊びに来ればいいだろ。」 「え。」 「ナターレのときとかくらいなら。どうにか上に怒られない程度に会いに来ればいいだろ。アジト使わなきゃいいかもしれないし。お前が来たいって言って嫌がる奴はうちのチームにはいないだろ。」 「…うん、ありがとう!呼んでくれなきゃ祟り殺す!」 「怖ぇよ。」 「えへへへ。」
「あ、そうだ。知ってのとおり俺たち好かれてないからさ、あんまり元暗殺チームって言うなよ。」 「了解!」 「あと、介護はイコール殺人じゃ無いからな、半殺しの加減も覚えろよ。」 「了解!」 「あと腹出して寝るなよ。」 「りょうか、って私そんなことしない!」 「どうだか、でも元気出たみたいだな。」 よかった、と笑うイルーゾォの心遣いがたまらなく嬉しくて。
(だからなおさらここにいたいと思ってしまう。)
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