舞われまわれ | ナノ







コンコン、とドアをノックすると覇気のない返事がした。
「ペッシー、やっほー。」
「わ、マキナ。」
なんか部屋全体が重苦しい空気に満ちている。
「今暇?」
「え、うん。」
「よしじゃあ語ろう!」

暫くして、安請け合いしたことを後悔した。

「どうせ、やっぱ俺なんかじゃ…。」
大抵こういうことをいう奴は、それを否定してもらうことを望んでいるというのは人生経験の浅い私でも分かる。
先ほどからテンプレートのように「そんなことないよ。」を繰り返し続けているわけだが、そろそろ限界に近い。
一度話の路線を変えたいけど主軸を変えてしまったらここに話を聞きにきた意味がない。

「あー、その。ペッシはさ。何が怖い?」
「え?」
「プロシュートに叱られること?痛いこと?辛いこと?苦しいこと?」
「・・・。」
「私は最初自分が傷つくことが怖かった。だから、他人を傷つけたの。」
「マキナ?」
「今はもっと怖いものがあるけど、その頃はとにかく痛いことが嫌で、それなのに人には痛い事してたの。」
「俺は、今も痛い事は怖い。傷つけるのも怖い。」
「うん、それが普通。皆そうなんだよ。正しいんだよ。でも私は弱かった。自分のことしか見えてなくて、相手だって怖いのに傷つけた。なんで出来たと思う?」
「…わからない。」
「私には力があったから。自分の手を直接汚すことはなくいくらでも人を傷つける力。」
「スタンド…?」
「そう。大きな力はね、それがもたらす事も意味もその重さも理解しないで用いると大変なことになる。」

生きるために、ただがむしゃらに人を殺し続けてきた日々を思い出す。

「だからペッシが悩んでいるってことはとっても良いことなの。考えて考えて、そうやって自分の心を整理していけばいいの。焦って、とんでもないことになってからじゃ遅いから。ビーチボーイ、だっけ?」
「うん。」
「彼を振るうことで起こることを良く考えて、理解して、それからでも何も遅くはないよ。」
「でも兄貴は、」
「立場的にプロシュートはお尻を叩かずに入られないだけで、ペッシが歩むスピードを決めたらそれに付き合ってくれるよ。ただ、立ち止まらないでね。」
「マキナ…。」
ホッとしたように彼は笑ったが急にまた眉は八の字になった。
「本当に、マキナは凄いよ。それに比べて俺は…。」

ああ、また始まった・・・!!

(振り出しに戻る。)