舞われまわれ | ナノ







「あれ、プロシュート。」
「おう。」
プロシュートはソファにドカッと座って珍しく酒を飲んでいた。
彼が家で飲むのは宴会の時ぐらいかと思っていたのだが。
「お前暇か。」
「藪から棒に。まぁ暇だけど。」
今月分はそれなりに稼いだし任務も回って来ず自由を謳歌している。

「…ペッシ関連?」
「ああ。あのマンモーニ、まだ割り切れないんだ。」
「そればっかりは急かしたら可哀想だよ。」
「わかっちゃいるが、甘いんだよ。傷つけることすらびびってやがる。」
「優しいんだね。」
「やけに肩もつじゃねーか。」
「プロシュートがどっかで思っていることを代弁しているのです。」
「…なんだそりゃ。」
「プロシュートはどうだったのさ。」
「何が。」
「初めての殺し。」
「…どうだったかなぁ。忘れた。」

一瞬遠い目をしたプロシュートは、なんでもないことのように言い捨てた。
触れないほうが良かったみたいだ。

「でもま、あいつみたいに迷いはなかったな。」
「それは凄い、けど参考にはならないね。」
「そういうことだ。だからどうも、あいつの気持ちを汲み取ってやれなくてな。暇なら話聞いてきてやってくれ。」
「私に大層なアドバイスは出来ないよ。」
「そこまで期待しちゃいねーよ。今度飯、奢ってやるから。」
「色々引っかかるけど。…わかった。」
「頑張れ先輩。」
「了解、兄貴。」

二人同時に舌打ちして、私はペッシの部屋に向かった。
人生経験浅い私に何が勤まるのやら。