舞われまわれ | ナノ
なるべく雨に濡れない道を通りながら公衆電話を目指す。 こんな天気なものだから、人通りは少ない。 皆しっかり傘をさしているのですれ違う人の顔は見えない。 そのせいもあってか、町全体がどこか暗い雰囲気だ。
気が滅入ると思いながらもブチャラティや父さんの声が聞こえると思うと足取りは軽くなる。 公衆電話に着くとポケットに入れていた小銭で手早く家へ電話をかけた。 暫く呼び出し音が続く。 どうしたのだろうか、ブチャラティは家にいないとしても父さんが出ておかしくない筈だ。
寝ているのだろうか、ありえる。
留守電に設定もしていないようなので伝言も残せないことが残念だが出ないものは仕方がない。 切ろうともう片方の手で電話を切ろうとしたとき 「もしもし…」 ブチャラティの声がした。
「も、もしもし!マキナです」 何処となく元気ないように感じるブチャラティの声に不安になる。 暖かかったり寒かったりで体調を崩したのだろうか。
「マキナ!?マキナ、か?」 「そうだよ、ブチャラティ元気?」 最近天気安定しないもんねー、なんて続ける。
「体に気をつけてね」 「…。ああ」 「父さんは?寝てる?」 「…」 「もしもーし、あれ、通じてる?」 「あ、ああ。通じてる」
どこかぎこちない返事に違和感を覚える。 「良かった。それで、父さんは」 「死んだ。父さんは、死んだんだ、マキナ」
え?
(天気が変わったのは、一瞬の出来事だった。)
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