舞われまわれ | ナノ







「マキナ、任務だ。」
「あいよー!じゃあ行ってくるー。」
「ちゃんと読め、俺とだ。そして決行日は明後日だ。」
「珍しいねぇ。」
リーダーと組むなんて。



「あれ食べたい。」
店の向こうに運ばれていくケーキが山ほど乗った台。
あの中から好きなものを好きな量楽しめると言う、素敵な代物である。
「任務が先だ。」

取り付く島もない。
リーダーは別に任務が終わったら奢ってくれるとかそんな気は無いのだから。
殺し終わったら騒然とした殺害現場で食えば良い程度だろう。

早く終わらないかな、なんて天井を見上げると控えめな照明の中それでもきらきら眩しいシャンデリアがすまし顔でぶら下がっている。

ここは高級なリストランテ、目標は今日ここでお誕生日会を今まさにしている最中である。
貸切でだ。
どんだけお金持ちなのよ。

私たちはと言うと小奇麗な衣装に身を包み経費で食事を楽しんでいる、わけがなく。
クロークの隅で絶賛潜伏中である。

「誕生日に殺されちゃうなんてかわいそうー。」
「健康すぎるのも問題だな。」

今回の主役はお爺さん。
とある一族で経営している企業の社長さんであり今日で御歳90歳、これはそのお祝いの食事会である。

けれども暗殺を依頼してきたのは何とお爺さんのご家族。
なかなかくたばらないお爺さんが邪魔なんだとか。
可哀想に。
笑っちゃうくらい、可哀想。

しかも以前に5回ほど家族が事故に見せかけて殺そうとしたけど全部失敗って言うんだから喜劇である。

そして今回最も面白いところは、私たちがそのパーティーに乱入して堂々とお爺さんを殺すところにある。
ああ、馬鹿馬鹿しい。

お爺さんを殺したのが一族の関係者でないことをハッキリ、お誕生日会に参加している企業などにアピールするためだそうな。
そのためについでに殺すことになっている人たちまでいる。
もちろんその人はそんなこと知らないんだろうね。
可哀想に。
ご丁寧に写真つきでリストまで送付してくれた。
間違えることは無いだろう。

一番可哀想なのはこの計画の関係者の頭じゃ無いだろうか。

そんな、姿を見られること前提の話なので顔以外のことが印象付けられるよう私とリーダーと言う凸凹な身長差のコンビ結成である。

リーダーは姿を消せるから普段の任務に支障が出ることは他のメンバーよりも少ないだろうし私もこれから顔は少しは変わるだろう。

加えて大きなサングラスと絆創膏、スーツの上から色の騒がしいマフラーをして、と顔のイメージを薄めるもの満載である。

さて、そろそろ約束の時間だ。
私たちはそれらしく、銃火器を担ぎ直しお誕生日会会場に押し入った。





(これで完了だ。警察が来る前に行くぞ。)
(待って!ケーキ!…ケーキ。)
(ぐしゃぐしゃだな。)
(誰よ!カート倒した奴!)