舞われまわれ | ナノ







「匂い、か。くそっ!」
ギアッチョがイラつきながらベッドを蹴る。
スプリングが嫌な音を立てた。


モーテルの組織の人間を根こそぎ殺し終わった後、部屋に戻って小休止。
備え付けのインスタントコーヒーで一息つきながら二人に先ほどのがスタンド使いの説明する。

「多分ね。蝶のフェロモン的な?とりあえず、鼻の効いてない私には効きませんでした、まる!」
「怪我の功名だな。」
「うるさいなぁ、イルーゾォなんかただ単にクロロホルム嗅がされただけだったなんて。」
「だって、なぁ。」

襟元からクロロホルムを噴出され、それをもろに食らったらしい。
スタンド攻撃ですらないなんて!

ギアッチョの話からすると敵のスタンド使いの能力は幻覚作用のある匂いを出すものだったらしく、彼の目にはボスの姿が映っていてそれを執拗に攻撃していたつもりらしい。

だからコート掛けが氷漬けだったのか。

「さて、行きますか。」
「今からか?」
ギアッチョが疲れた顔で問うてくる。
「逃げられたらどうするのさ。」
イルーゾォも首を縦に振っている。
「マジかよ。」

シャドウボクシングお疲れ様なんて言ったら割と強めに小突かれた。
本当に疲れたんだろう。

ざくざくと道と言うには獣道に近い木々の隙間を進んでいく。
半刻ほど進むと打ち捨てられた割には立派なコテージが見えてくる。

「誰が行くよ。」
「そういうギアッチョはどうなのよ。」
「疲れた、死にそうだったら助けに行く。」
「俺も山道疲れたわ。」
「この男どもは…じゃあ私が行くしかないじゃ無い。」
「期待してるぜ。」
「マキナを信頼してのことだよ。」
よくまぁ心にもないことをベラベラと。

「トルネードイチゴパフェ。」
「「あ?」」
「奢ってね。」
一方的に約束を取り付けコテージに向かう。
歩きながらククリナイフも用意しておく、準備万端どんとこい烏合の衆!



けたたましい音を立て、いくつもの絶叫がこだまして数分、先ほどのことが嘘のような静寂に包まれるコテージ。

(いっちょあがり!)
(やっぱお前怖いよ。)
(半端ねーのな。)