舞われまわれ | ナノ
鏡の世界から標的の部屋を見ると、足元のおぼつかないギアッチョしかいなかった。 変わっていることといえば彼の眼の前のコート掛けが氷付けになっていることくらいだがそれは彼の能力なのだろうから気にする必要はないだろう。
「どういうこと?」 「さあなぁ、他に人の気配はないと思うんだが。他のところを見てくる。」
そういってイルーゾォは周囲を見に行ってしまった。 ここでギアッチョに走り寄らないあたり腐ってもギャングである。 任務のほうが人命より尊いとされる世界なのだから。 状況の確認が先だ。
見たところギアッチョには出血の類はないように見える。 彼の防御は鉄壁なので当たり前だ。 だからこそ、何故あんなに足元がふらついているかと言うことが問題だ。 グラッとギアッチョの体が倒れる。
こりゃもう死んだかな、とも思ったが死因が皆目見当もつかない。 苦しそうにもがいているわけでもないし、一体なんだと言うんだ。 まぁこちら側の世界に入って来ないことから死んでは無い様なので安心する。
「表のほうでたくさん倒れてたぜ。」 「親玉はいないんだよね。」 帰ってきたイルーゾォから報告を受ける。 そのとき、此方の世界の洋服ダンスが開いた。 もちろんなかには誰もいない、つまり…。
「やばくない?」 身動きの取れないギアッチョに男は近づいていく。 知らない顔だ。 手下の一人だろうか。
「引っ張りいれちゃってよ、イルーゾォ。」 「こっちに気付けばできるんだけどなぁ。」 「そうなんだ。」
仕方がないので鏡の前にあったつぼを割る。 盛大な音を立てて割れた壷の方を振り返る男の視界にはいやでも私たちが移った。 びっくりして彼は後ろを振り返るが、そこに私たちはいない。
「よくやった、マン・イン・ザミラー!」 そして、男が鏡に引きずりこまれた。
「なっ、お前ら一体…!!!」 「質問するのはこちらだ。おたくらのボスは何処にいる。」 尋問を始めたイルーゾォはナイフをちらつかせながら近づく。
私はといえば場所を聞き出し次第向かうためにターゲットからは離れる。 しかしナイフを男の喉下にあてようかという時に、イルーゾォが足元から崩れた。
「っ!?アンタ何したのよ!!!!!」 マンインザミラーによって保たれていた鏡の世界が崩壊していく。 男の足元にはイルーゾォとギアッチョが倒れている。 イルーゾォのスタンドが解除された。 問題はどうして彼らが倒れたか。
「小娘、お前も敵か?」 考えないと。 男は特に何か動いたわけではない。 それとも目で追えないほどの速さだったのか?
「貴方にとっての敵って何かしら。」 「決まっているだろう。我々に仇なす者だ。」 「そう、だったらどうするの。」 「とりあえず、動けなくなってもらおう。」 そういって男が手をかざすと一匹の黒アゲハにしては巨大な蝶が姿を現した。 スタンド使いって訳ね。
どんな能力かは分からないけど、これは骨が折れそうだ。
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