舞われまわれ | ナノ
なるほど、つまりプロシュートはスポ根的な修行でペッシをしごいて彼が自分から暗殺チームを離れるように仕向けたかったわけか。 プロシュートの気持ちは分かるがそれはいくらなんでもペッシがかわいそうじゃ無いだろうか。
なんて事は一番本人が分かっているようなので言わないが。
「さてと、言いたい事は言ったしおれは帰るかなぁ〜。」 散々かき回すだけかき回しておいてメローネはリビングを出て行った。
私は出て行くことも、何かプロシュートに話しかけるタイミングも逃し重苦しい静寂の中紅茶を飲んで間を持たせるしかない。
ってかこれメローネに飲まれた奴じゃんか、失敗した。 本当にいろいろしてくれちゃって、メローネめ。
「・・・。」 「・・・。」 沈黙が気まずい。 「・・・プロシュート。」 「・・・なんだよ。卑怯で悪いな。」
誰もんなこと言ってねーよ。 と思いのほか卑屈なプロシュートに若干イラッとする。
「うじうじするくらいならやめればいいじゃん。自分で卑怯って思うならやめればいいじゃん。」 「思ってねーよ。」 「思ってないといった時点で思ってるんでしょ?」
何時だかのせりふをそのままお返しする。
「ちっ。あいつには向いてねーんだよ。」 「そんなのペッシが決めることだよ。」 「壊れちまってからじゃ遅いんだぞ」 「だったら尚のことしっかり特訓してあげなさいな。私には…。」 ・・・流石に言いすぎかなと口をつむぐ。
「なんだよ。」 「なんでもない。多分怒る。」 「気になるんだよ。」 「でも怒られたくないし。」 「…怒らねぇから、とっとと言え。」 「…私にはプロシュートが逃げているように見える。」 実に彼らしくない。
「ペッシが暗殺者の適正があるかないか、それを見定めようともしてない。勝手に向いてないって決め付けてる。そりゃあ付き合い長いだろうし分かると思うのも仕方が無い。でも人って成長するんだよ。最後にペッシと会ってから再会までどれくらいあった?その間ペッシに起きたこと全部知ってる?知らないでしょ。それなのにペッシのことは何でもお見通しって具合に彼の思いも努力も全部『向いてない』で片付けてしまうのはプロシュート自身が暗殺者としてのペッシと向き合うことから逃げてる気がするな。…怒らないでって言ったじゃん。苦しい。」
話の途中から掴まれていた襟首を離されソファに体が落ちる。
「…ちっ。」 「子供って存外鋭いでしょ。」 「んな可愛くねー餓鬼がいるか。」 「まぁでもマラソンも精神面を鍛えるためなら無駄じゃ無いと思うけど。」 学校にいた頃にマラソンは体育の定番メニューだった。
「お前はマジで14歳かよ。」 「ずっと周りが大人ばっかの環境だったからね。子供らしさのかけらも無くて悪かったな!」 言いたい事は言ったし帰ろう。
・・・ってこれじゃあメローネじゃ無い。 「うわぁぁぁ…。」 自己嫌悪。 私もっとまっとうな人間に、ってこのチームにいる時点でまっとうじゃ無いけど…。 「すげー顔。」 「うるさい!それと私はもう15だ!」 誕生日は知らないけど、私の情報が載っていた書類の日付が私の年の目安だ。
「15の餓鬼に説教されるようじゃまだまだだからね!」 自室に繋がる廊下へ歩き出す。 「うっせぇ余計なお世話だ!とっとと帰れ!」 しっしっと追い払われる。 いい気はしないがいつもの調子に戻ったようなのでよしとしよう。
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