舞われまわれ | ナノ







「マキナは、10代だよな?」
体力づくりという名目で町内10周のマラソンから帰ってきたペッシにクッキーを勧めると、ようやく警戒を解いて話しかけてくれるようになった。

「そうだよ。」
「凄いよな、そんなに若いのにもう一人前で。」
俺なんかとしょぼくれだすペッシは図体はでかいのに酷く小さく見える。

「良い事じゃないと思うけど。」
ははは、と苦笑せざるをえない。
むしろペッシは正常で、私が異常なのだ。

「人を殺すのに抵抗があるって良いことだと思うし。」
「でも、それじゃあ暗殺は…」
「うん、暗殺者としては失格、でも人間としては合格だよ。別にギャングったってほかに役職はあるんだし無理に暗殺チームにいることもなんじゃない?」

「…だけど。」
「いや無理はしないでねってだけだよ。割り切れないと狂うか壊れるかするらしいよ。人を殺すってそういうことだと思う。」

きっとチルコの彼らは割り切れなかった人たちなのだと、今の私は思っている。

「うん、ありがとう。でも俺、やれるところまで頑張るよ!」
「偉い偉い!」
「楽しそうじゃねーか。」頭に重圧、上からは聞きなれた不機嫌そうな声が降ってくる。

「ギアッチョ、私の頭は肘置きじゃ無い。」
「ギアッチョたんはマキナが中々帰ってこないから寂しかったんでちゅよねってぶしっ!!!」
「ぶっ殺『した』」
大きな氷の塊がリビングに入ってきたメローネの頭に直撃した。
そんな様子を見てペッシは固まっている。
私もこの二人の暴力的なじゃれあいに慣れるまで少しかかったものな。

「ペッシ、大丈夫だよ。あれ本気じゃな、くもないけど、メローネ生きてるから。多分、今までと同じなら。」
「多分なの!?」

「マキナったら可愛いー、先輩風吹かしちゃってってあれ、アンタ胸大きくなった?」
「やっぱそろそろ死んでいいよ、メローネ。」
胸を這いずる彼の腕に熱々のティーカップを当てる。
「あっつぅ〜…アンタ俺のあしらい方どんどんぞんざいにしてない?」
「してないしてない、ギアッチョもあんまり室内冷やさないで。寒い。」
見ればメローネの足元が雪に埋まっている。

でもそっか。
「私、先輩かぁ…!」
そしてペッシは後輩か。
「ね、ね、ペッシ。ちょっと先輩って呼んでみて!」
「え、先輩?」
「おぉぉ!なにこれこそばゆいぃぃぃーっ!!も、もう一回!」
「マキナ先輩…?」
「な、なんだい後輩!」
「いや呼べって言ったのお前だろ。」

頭上からギアッチョの突っ込みが入るが気にしない。
というかそろそろ肘をどけてほしいところなんだが。

「ペッシィー!!!!」
「は、はい!?」
「困ったことがあれば何でも言ってね!『先輩』として、出来る限りのことはするから!」

後輩よ!っと私はペッシの両手を握り締める。
先輩って何だか、気分良い!!!

(マキナせんぱぁい♪)
(メローネに言われても別に嬉しくない。)
(あれー?)