舞われまわれ | ナノ
「どうしちゃったんだろう僕。」
マキナの住所は調べようと思えば調べられる。 その後で偶然を装って会いに行こうと思えば出来る。 けど、怖くて調べられない。
「ボスぅ・・・。」 今まで僕の世界はボスだけだった。ボスを中心に世界が出来上がっていた。 そんな僕だから親しい人はいないし必要なかった。 だってボスがいればそれでよかったのだから。 それなのに。 今までボスによって占有されていた脳内の片隅でチラチラと彼女の笑顔が焼きついて離れない。 こんなこと初めてだ。 なんであんな年下の少女にここまで揺さぶられているのか。 いやそれはわかっている。 僕の全てであるボスを肯定してくれたから、僕を肯定してくれたからなのだろう。 それがたまらなく嬉しいと同時に、僕の全てがボスでなくなることが怖い。 マキナがいなくなっちゃえばいいとさえ思いかけた。 けどそれは、やっぱり嫌だ。
「はぁ。」 この大問題に対してボスは大変投げやりである。 僕が頭を抱えているときは絶対に電話はならなくて、仕事モードになってから見計らったかのようにかけてくる。
やっぱりボスは凄いなぁ。 年末に報告書を出さなかったチームからのたまりに溜まった書類の山を片付けようにもため息が止まらない。
「どうされましたか?参謀殿。」 「あ、いえ。何でも無いです。」
あはは、と新たに書類の山を抱えてやってきたティッツァーノさんとカルネさんが首をかしげる。 「そうですか?気分が優れないなら何か淹れましょうか?」 「いえ、大丈夫ですよ。すみません。」 カルネさんは無言でおろおろしている。 心配してくれているのだろう。 「…ちょっと、息抜きに散歩してきます。これ終わった分なので。」 「ご苦労様です。」
二人に笑顔で見送られながら本部を後にした。
朝から、と言うよりはここ数日部屋に缶詰だったので外の空気が気持ちいいことこの上なかった。
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