舞われまわれ | ナノ







シャワーを浴びるとすぐにブチャラティは眠ってしまった。
疲れているのだろう。
夕飯になったら起こすように言われたけど、疲れているのなら起こすのは悪い。
いいのかな。

しかしそれは夕飯は食べるということなのだから、と私は彼の好物で食卓を埋めるべく、買い物に行くことにする。

「お父さん、私買い物に…お父さん?」
「っ、マキナ。買い物に行くのか?」
「うん、…それお薬?何処か具合悪いの?」
「いや…ただの栄養剤だ。」
「ほんと?」
「お前がいない間はどうも食事が偏りがちになってな。」
「…そう。ならいいの。じゃあもう今日は腕によりをかけて栄養満点のご飯作るから!」
「気をつけて。」
「うん、行ってくるね。」

お父さんは嘘をついている、気がする。
でも追及する気にはなれなかった。
お父さんの背中が小さくなったことにも気付いてる。
でもそんな残酷な事実と向き合う気はまだ起きない。

「さてと!」

気分を入れ替えるため大きな独り言を呟く。

「何があって、何が要るのかなっと。」

冷蔵庫の中身を確認しようと開き、鎮座するホールケーキを見てため息をつく。
「忘れてた。」

どうしたものか。

流石にブチャラティの手前ホールで食べるのは、いや彼は気にしないと思うのだが。
どうも私は彼の前では良い子になりがちだ。
猫かぶりは良くないとは思うのだが、彼の前でホールケーキを食べるのを良しとしない声が脳内で上がる。

しかし10分の3ほど私がフォークで食べてしまっているものだからその残りを切り分けるのは申し訳ない。
今から食べたらお腹一杯になって夕飯がどうしても手抜きになりそうである。
それも避けたいが、そろそろアジトに帰るから早急に食べ終わらなければ。
何で私はホールケーキなんて買ってしまったんだ。
そうだ、メローネが悪いと自己正当化に努めてみる。
ケーキの処分の仕方を頭の片隅で考えながら、私は家を出た。