舞われまわれ | ナノ







ポルポが刑務所に入ると言い出した。
正気の沙汰かと驚く声も上がった。
しかし俺には彼の思惑が良く分かる。

後日、個別に呼び出された俺は彼の隠し財産の新たな隠し場所を刑務所に入る前に確保する任務を請け負った。
重大な任務だ、失敗すれば待つのは死。
しかしそれは同時に成功すれば何物にも変えがたい信頼を得ることが出来る。
彼は部下に対し信頼できるかどうかに重きを置く。
これに応えれば昇進も夢じゃないだろう。
今よりも安定した生活と確かな権力の後ろ盾が出来上がる。

そうすれば…。

俺はその密命を受けた日からイタリア中を飛び回り、最善の場所を探しに探し回った。

「ブフゥ〜、抜かりはないんだな?」
「はい。」
「なるほど、な。君は十分に、いや十二分に私の期待に応えてくれた。礼を言うよ。これで私も安心して刑務所に入れる。」
「光栄です。」
「君は本当にギャングらしからぬ人間だ。ここにいるのが不思議なくらいだよ、なんていうのも野暮だねぇ。」
話は終わりなのだろう。
「それでは失礼いたします。」
「ああ。何か困ったことがあれば出来る限りの協力を約束しよう。君は私の信頼に応えてくれたからねぇ。」

無言でもう一度礼をし、ポルポの事務所を後にした。
任務を終えた途端、どっと疲労を感じる体を引きずり家を目指す。
なにか食べようか、いや先に眠ってしまおうか。
扉を開けた俺の目に映ったのは、間抜けな顔でケーキを頬張っているマキナだった。

これは何かの褒美なのだろうか。