舞われまわれ | ナノ







カウントダウンも終わって数日後。
明日にでもアジトに戻ろうかというときにブチャラティは突然帰ってきた。

「ブ、チャラティ…」
私が以前のメローネのようにホールケーキに挑戦しているときに。

「マキナ!?」
彼との違いといえば、このケーキが年始用に作られたもので、先ほど半額の値段で手に入れたということだけだ。
なんとも間抜けなところを見られたものである。

「は、ハッピーニューイヤー?」
「?…そうか、もう年が明けたのか。」
年明けに気がつかないとは貴方何処まで行っていたんですか。
人里離れた山だか森に行ってたとしか思えない。

「ハッピーニューイヤー、マキナ。」


昼を食べていないというブチャラティに軽食を作りながら気付く。
「なんかブチャラティ、やつれてない?」
本当に貴方は何をしていたんだ。
「そうか?そうかもな。最近忙しくて。」
「体は資本だよ、大事にしなきゃ。」
あるもので作ったパニーニを彼の前に置く。

「グラッツェ。そうだな、肝に銘じておこう。それにしてもマキナ、身長が伸びたな。」
「でしょ、でしょ!!!」
お父さんといい、ブチャラティといい気がついてくれるのが嬉しくてたまらない。

パニーニを上品に食べる彼に美味いと言って貰えて機嫌は最高潮だ。
鼻歌交じりに自分用の紅茶を淹れにキッチンに向かう。
ドッピオと買い物に行ったときに美味しそうなクッキーを見つけたのだ。

「マキナ。」
「ん?あ、紅茶淹れるんだけどブチャラティも飲む?」
「いや、…辛くないか?」
それは暗殺がということか、ギャングそのものに対してか。

「辛くないよ。どんな形であれ私を必要としてくれる人たちがいるんだもの。」
人間としての私を必要としてもらえてる。
それだけで十分だ。

「そうか。しばらく見ないうちに、いい表情をするようになったな。」
「やだなぁさっきから。褒めすぎだよ。」
最高潮のそのまた上はなんていうんだろう。
何だか恥ずかしくなって私はキッチンに退散した。


(なぁマキナ、冷蔵庫にホールケーキがあるが)
(ははは、はははははは!何でだろうね!)
(お前が買ったんじゃないのか?)
(も、もちろんそうなんだけどね、ははは!)