舞われまわれ | ナノ
「畜生!何邪魔しやがる!!拷問人形!!!!!!」 「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
少女が突き飛ばしてくれたおかげで、弾丸は俺の頬を掠るのみとなった。 彼女はその場に蹲り怯え、ただひたすらに謝り続ける。 その反応から、普段の彼女の生活が容易に想像できる。 俺は沸々と怒りが湧いてくるのを感じた。
父のためパッショーネに入って早二年、組織の中の何処を探しても正義は無かった。 俺の心も、その矛盾の中で死んでいくのを感じた。 ただ命令を全うする日々。 しかし、そんな俺にも許されざる悪はわかる。 こんな少女をここまで怯えさせるということは普段から酷い暴力が振るわれているのだろう。 抵抗も出来ない少女に。
「おっと、動くなよ?こっちは飛び道具を持ってるんだからよ。下手に近づくと危ないぜ?」
スティッキーフィンガーの射程は約2m。 しかしジッパーで腕の射程を伸ばせば…いやまだ遠い。 なんとか距離を詰めなくては。俺は少女を背後に隠し、男と対峙した。
「無駄な抵抗はよせ、ネアポリス中のお前のところは全滅だ」 「それじゃあ幹部ポストに空きが出来るに違いねぇな。お前らの首を持って帰るとするさ!」
“ら”ということはスカルベと二人組みだともうばれているようだ。 どうしたものか。 …仕方がない。 一か八かだ、やってみよう。 リーダーにも言われたことだし、な。
「スカルベ、いまだ!!!」 「なに、奴はまだ部屋に…っ、しまった…!」 「もう遅い、スティッキーフィンガーズ!!!!!!!!!!!!」
一瞬の隙に間合いを詰め、ラッシュを決める。 勝負はそれで決した。
「健闘は祈らん、か」 我ながら卑怯な戦い方だ。 「おい、ブチャラティ!こっちの部屋で一人死んでるぜ。多分この界隈のチンピラだ。集金の時見かけたことがある」 「そうか。…俺たちが踏み込む前に既に」 「…あの」
遠慮がちに発せられた声に少女の存在を思い出す。 「ああ、すまなかった。怖かっただろう」
「私を飼ってくれませんか?」
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