舞われまわれ | ナノ







なんで13歳の小娘に介抱されてるんだ、恥ずかしくないのかとも思うがきっと皆介抱しなくても平気なのだろう。
結局は私のお節介なのかなと結論づけるが、やはり介抱しないわけにも行かない。
ひとまずギアッチョの安否を確認しようと立ち上がると、後方からボトッと落下音が聞こえた。

「…イルーゾォ…。」

そういえばマンインザミラーは持続性が無いって言ってたっけ。
「大丈夫?」
「…み…。」

水と言いたかったのだろうか。

再度目の前に水を置いてやる。
と、その瞬間後ろから何かに圧し掛かられる。
メローネかと拳を握り締めるが視界の端に見えた髪の毛は金髪ではなかった。

「ギアッチョ…臭い。」
酒臭い。
「おう…ック、飲んでるかぁあ?」
「飲んでる飲んでる。」
ぶどうジュースをみせる。
酩酊状態ならプロシュートのようにワインと勘違いしてくれるだろう。

「あ?なんだック…お前、ワイン飲ん、でるのか?」
「うん。」
「酒はやっぱりウォッカだろぉがよぉおお!ほれ、グビッと行っとけ!」
「あんた何時の間に新しいグラスをってちょ、ん…っ!??!?ふっ…へ…?ごほっ、いっ、けほっ…。…っ?!?!?!?!」
無理やり酒を喉に流し込まれる。
てか喉が焼けるように熱い、熱いって言うのこれ?
熱い通り越して痛いほどだ。
鼻の方にまで強烈なアルコール臭が突き刺さる。
むわっと鼻腔を痛いほど刺激され、目にまでなんか来た!
一気に顔の温度が上がっていくのがわかる。

煙る意識の中ギアッチョのもう片方の手が握るボトルを見て我が目を疑った。
「っ…ギアッチョ、それは…スピリタスじゃ、ないの…。」
「そうだっ、やっぱりスピリタスのストレートに限るぜえ!!!!オラァ、イルーゾォも飲め飲め!!」

うわぁなんか頭がくらくらする。
スピリタスって一番強いお酒だよね、イルーゾォ逃げて、超逃げて。

「おまえ、やめろぉおおおおそれはまずいってええええええ!!!」
「んだよお、うまいぜええ?」
「大体なんでストレートなんだよ!!!ストレートで飲むもんじゃないだろおおおお!!!!」
「人の好意は受け取っとけ、ワイン薄める奴はいねえだろ?他の酒も一緒だ!!!」
「なんだよそのへりく、うあああ…足が凍っ、お前、アジトでスタンド使、え、ちょわあああああああああああああ」

イルーゾォの叫び声が頭の遠くのほうで聞こえてくる。あー、これやばいな。
とりあえずこの場から避難しよう。


キッチンまで戻ってミネラルウォーターを一気飲みする。
少し気分がよくなった、お腹一杯食べた後で本当によかった。
空きっ腹にあんなもの飲んでいたら、胃がどうにかなってしまうだろう。

もたつく足が床に転がるワインボトルを踏まないように気をつけながらリビングに戻る。
奥のほうでイルーゾォが普段の五割り増しの青い顔で目を開けたまま寝ているがその横のギアッチョが大変危険と分かったので見捨てることにした。

二度とギアッチョの視界に入らないように、彼から死角の位置に移動する。
まさかスピリタスを飲むことになるなんて。
プロシュートが読んでいた雑誌で果実酒を作るのに紹介されてたよな、なんて思い出すとイルーゾォの一言からわかるとおりそのまま飲むなんて正気の沙汰じゃないわけだ。

ギアッチョ、恐ろしい奴。

(お酒は二十歳になってから。)