舞われまわれ | ナノ
「酒は飲んでも飲まれるな。」 昔の人はよく言ったものだ。死屍累々の地獄絵図を前にしてしみじみとその言葉を胸に刻み込む。
だらしの無い大人たちは放っておいてゆっくりと食事を楽しむ。 楽しそうな笑い声や悲痛な泣き声、それと怒声やらいびきやら呻き声が無ければ最高の食事なのだ。
あ、空いたお皿はキッチンに下げてしまおうかな。
タコのマリネとビーフシチューは完売。 ピッツァはまだ二三切れ残っている。 冷め切ってしまったがラップに包んで取っておこう、レンジで暖めれば明日も食べれる。 他のおかずはまだ潰れていないメンバーがつまむことを考えて置いておこうか。 私は続いてケーキを楽しむことにした。
「うぅ…。」 「ちょっとイルーゾォ、足元で吐かないでよね。」 「み、水…。」 「ほれ、イルーゾォ!もっと飲め!!」 「いやぁぁああ!!!ほんと無理もう無理!!あ、アルコールは許可しないいぃぃぃぃぃ・・・・」 プロシュートも大概絡み酒だがイルーゾォも自分の許容量を考えて飲んでほしい。 鏡の中に引きこもってしまった。 念のため鏡の前に水を置いておいてやる。
「マキナー、全然飲んでないじゃねーかー?飲め飲め!」 「飲んでるよー。」 「そうかー、足りなくなったら言えよー!」 ぶどうジュースがあってよかった。 白ワインを勧められないうちにプロシュートのそばを離れる。 「爆睡してるし…」
ソファの裏手でホルマジオがぐーすかいびきをかいて寝ている。 その横では何が楽しいのかジェラートが爆笑していた。 あれ、ソルベはと思うと足元でめそめそしている。 うーん、シュール。
「俺だってさぁー、もっといい生活したいんだずぇー・・・なのによぅ、給料低すぎないかー、なぁ!」 「そうだねー。」 適当に相槌を打ちながらストゥルッフォリをつまむ。ギアッチョの手作りだったよな、いやはや絶品である。
そのギアッチョはと思うと別のソファの背もたれに干された洗濯物見たく倒れこんでいた。 あれ、生きてるのかな。
ぽりぽりぽり。 目の前にあるものだからついつい摘んでしまう。 お腹は当の昔に割りと一杯なんだけど。 ナターレの料理は残すものと思っていても勿体無いなとか思ってしまう私は貧乏性なのかもしれない。
プロシュートは今度はリーダーに絡んでいるようだ。 リーダーは素面と変わらない様に見える。 少し普段より血色がいいかな。
さしあたって心配なのはギアッチョか、そういえば鏡の前に置いた水がなくなっている。 イルーゾォも大丈夫だろうか。
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