舞われまわれ | ナノ







「あれ、良い匂い〜。シチュー?」
冷やしておいたフルーツを冷蔵庫に取りに行くと、とんでもなくお腹の空く匂いが漂ってきた。

「ああ、プロシュートがビーフシチューを煮込んでるんだ。」
エプロン姿が妙に様になっているホルマジオが教えてくれる。
「プロシュートのビーフシチュー!?期待せずにはいられない!!」
これは夕飯が楽しみだ。

「そっちは何作ってんだ?」
「普通のケーキ。イルーゾォがパネトーネ苦手って言うから。」
「あー、あいつドライフルーツ苦手だもんな。人生損してるぜ。」
「ははは。あれ、甘い匂いもするね。」
「さっきギアッチョがストゥルッフォリ作ってたからな。」
「あ、本当だ!…味見味見…」
「させるかー!」
「はっ!ギアッチョ、何時の間に…」

私がストゥルッフォリの山に伸ばした手が叩かれる。
「飯食う前に甘いもん食ったら腹いっぱいになるぜ、いいのか?あ?」
「一個だけー、ね?」
こんな良い匂いさせてるのに!

「そうか、じゃあプロシュートにマキナの分のシチューは俺に回すように言ってくるぜ。」
「嘘です!我慢しますギアッチョ様ああああ!!!!」
なんて恐ろしいことを言い出すんだこの眼鏡は、と内心悪態をつきつつここは引き下がる。
ビーフシチューだって食べたいんだ。
おとなしくフルーツの盛り付けのために私はメローネの元に戻った。