舞われまわれ | ナノ







「約束したもん、私が出す!」
「待てお前、世間の目を考えろ!10歳そこらの餓鬼の財布に頼ってる大人って可笑しい通り越して不憫だろうが。お前は奢られとけ。」
「いやいや、この後荷物も持ってもらう予定だからギブアンドテイク!奢られとけよ」
「あー、荷物くらい持ってやるから。ここは俺が出す、わかったか?」
「いやでも」
「わかったか?」

一言一言区切るように諭される。
まるで私がわがまま言ってるみたいじゃないか。

「…はい。ありがとう」
「よし、じゃあ先に出てろ」
「…うーむ」
結局こうなるのか。


「服はこれでよし!」
「後は何買うんだ?」
服屋を二、三軒回ったところで目ぼしい物は大体手に入った。


「あとは靴なんだけど、今後のためにヒールのある靴を買っておこうと思って」
「なんだ、まだ買ってなかったのか」
「見るんだけど、どれが良いのかわからなくなっちゃうんだよ」
「…そうだな、慣れない内はピンはやめておけ。こけて折るのが目に見える」
「あー、確かに折れそう」
「あと中途半端な高さは逆に足が疲れるからな、高めと思うくらいが案外丁度良い」
「プロシュートについて来て貰って正解だった!」

伊達にいつも暇そうにファッション誌読んでないね!と心の中で付け足した。



あれはどうだこれはなんだ、プロシュートのファッション講義をはさみつつ納得のいく靴を見つけることが出来た。
「これなら、ヒール部分でも人殺せそうだね」
ヒールは太めで安定感もばっちりだ。
「あのな、ヒールは横からの圧力に案外弱い。やるなら踵でやれ」
「了解しやした、買ってくる」

会計をしながらプロシュートへの御礼を考える、が思い浮かばない。
昼食代をお礼にとばかり考えていたのだが、そうもいかなくなったからなぁ。
あ、そうだ。

「すいません、これもお願いします。…値段だけ取ってもらっていいですか?」