舞われまわれ | ナノ







「ブレインシチュー…楽しめるかな?」

いつもより明るい声でブレインシチューに呼びかける。
楽しもうとすれば、いいんだよね。

「背中に焼鏝を押し付けよう」
「何を…つぅううううううああああああああああああああ」
ああ楽しいなぁ。
「目をつぶしてしまおう」
「あ…ぐあああああああああああああああああああああ」
ああ楽しいなぁ。
「トラックとぶつけてしまおう」
「ぐはっ……あがっ…ああああ」

ああ楽しい、わけが…ないじゃないか。

駄目だ、楽しいと思おうとすればするほど楽しくない。むしろ…。
「私こんなこと…したくない」
小さくつぶやく。

こんなことが彼らの耳に届いたら大変だ。
こんなことなら今までどおり流れ作業で事を運べばよかった。
辛い、苦しい。
今まで殺してきた感情が蘇ってきた。

いや違う、私は機械だから感情なんて…そうか機械だから。
私は機械だから楽しいとも思っちゃいけないのかな。
息苦しさが収まる。
今までどおりが一番良かったのかな。
お兄さんの体はひしゃげて関節は変な角度に曲がってる。
このままじゃとっても辛いだろう。
止めを刺さなくちゃ。
でも普通に殺したら私が怒られる。

「―――っ」
お兄さんは動かない。

お兄さんはもう動かない。
何だかとっても疲れた。
私はドアの脇に座り込む。
そのうち、『チーム』の人が後処理に現れるだろう。