舞われまわれ | ナノ







メローネがおんぶでもいいなんて言い出してギアッチョが切れないかと心配したが、彼はぶーぶー口を尖らせるだけだった。
ホッと胸をなでおろす。

しかし立ち上がりかけたメローネは、途中でまたすとんと座った。
「あれ、どうしたのメローネ。ほら立ってよ」
手を差し出しながら言う。
「14歳に本気で世話焼かれてる俺って…」

なんか呟いているが気にせず手をずいと差し出す。
こっちは夜中ずっと探し回ってたのだ。
それでやっと見つけたと思った相手に熟睡されている身にもなって欲しい。
とにかく疲れた。
早く帰りたい。

メローネは突然ニコッと微笑んで手を握りかえしてきた。
よし、と引っ張ろうとしたら、逆方向に体が引っ張られる。
「うわっ…ちょ、メローネ!」

あっという間に、メローネの胸にがっちり納められた。
首筋に顔をうずめられて彼の前髪が首に触れる。
くすぐったいことこの上ない。

けれども、なんだかいつものセクハラとは違う感じがして抵抗するのが憚られた。

「外で寝ちゃったから人肌が恋しくてーいやぁ、子供体温はやっぱりいいね。ベネベネ」
確かに彼の体は冷え切っていた。
走り回ってた私の体温とは偉い違いだ。
「…しょうがないなぁ」
了承の意を伝えると尚のこときつく抱きしめられる。
正直苦しいが今回ばかりと我慢。
後ろからギアッチョのため息が聞こえた。

「あ!じゃあ俺、マキナ抱っこするからギアッチョ俺抱っこして帰ってよ」
数秒後思いついたようにメローネが言った。
「ふざけろ!おら、帰るぞ!!」
本当に一言多い。

「メローネ」
放してと言う意味を込めて名前を呼ぶと至極嬉しそうな笑みが帰ってきた。
「ディモールトグラッツェ♪」
変な言い回し。
「どういたしまして」
開放されて立ち上がる。
メローネはまだ立たない。
なんだか先ほどから規視感が酷い。
何でか、私はメローネの頭を撫でていた。

「あれ、見透かされてる?」
「うーん、どうだろう」
自分でも良くわからない。
でも、もしかしたらという思いもある。
嫌な夢を見ると人肌が恋しくなるものだと私は知っている。
もちろん彼がそうだという根拠は何処にもないんだけど。
「そっか」

「とっとと立てメローネ。置いてくぞー」
「えーこれからギアッチョも抱っこしようと思ったのにー」
「凍らすぞ」
「冗談ですよー。ギアッチョ体温低いから今は俺も嫌ー」
「え、抱っこしたことあるの?」
というか今じゃなければ大の男を抱っこするのか。
半ば彼の冗談に呆れて聞き返す。
「あるよ〜」
「え」
「マキナが誤解すんだろマスク!死ね、苦しんで死ね!!!」

…。
さて、帰ろうかな。