舞われまわれ | ナノ







居場所がなかった。今日もまた別の男が来る。
母さんは今日も楽しそうだ。俺は今日も、
「メローネー」
「死んでんじゃねーの?」
「姉…さん?」
「「は?」」


「もう忘れてよー、間違えることだってあるじゃんー」
「っごめんごめん」
「まさかの反応過ぎて、っぷくはあははははははは…」
壁に手を着いてまで苦しそうに笑うギアッチョに殺意を覚えた。

「ギアッチョ、男も母体になれるか試してみる?」
「わー、メローネごめんってばーほら、ギアッチョも謝ってー!」
夢見心地の気分は、笑い声の大合唱によって覚醒させられたのだ。

「それで、俺寝てたわけ?」
「うん、あの、メローネ。ごめんなさい」
「…なんであんたが謝るの?」
マキナが頭を下げてくる。
当事者はどちらかというとソルベとジェラートだろ。
「いや、何もフォローできなかったし」
最大限に眉を八の字にして彼女は言う。
「ふーん…あぁ、マキナありがとう」
「…なんでありがとう?」
「昨日飢え死にしかけたら前貰ったキャラメルのおかげで生き延びれた」
「そんな大げさな」
彼女の顔はまだ晴れない。

「…俺も大人気なかったよ」
「え?」
「そんな困った顔しなくてもだーいじょうぶー♪ちゃんと仲直りするよ」
いつもの風に笑顔を作ってみる。
そういった途端そんなに嬉しそうな顔をするなんて、本当に仲直りするしかないじゃないか。
「んじゃ帰るか」
黙って見守っていたギアッチョが表通りを指差して言う。
そういえばマジで関係ないギアッチョまできてくれたのか。
俺ってば愛されてるなー。
「歩けないー。ギアッチョだっこしてー」
「ふざけるな!」

愛が痛い。