たまったものじゃあない。




「マキナ先輩ー!」
「…。」
「あれ、先輩。もしもーし。」
「…話しかけないでくれるかな?」
朝の登校、これがこんなに心臓に悪いイベントになるなんて。
女子の嫉妬は怖いんです!

「ちょっとマキナー!どういうことよー!!」
「な、な、なんであんた、じょじょじょ、仗助君とぉおおおお!!!!」
「私が聞きたいわよ。」
教室に着くと友達が鬼のような形相で詰め寄ってきた。
「マキナはマークしてなかったわ!まさか、アンタが…。」
「私たちの生活から潤いを奪わないでよぉおおお!!!」
落ち着け、お前ら。
「皆が心配するようなことは何一つとしてないから安心して、ほら可愛い顔が台無しだよ。」
「そ、そうよね。」
「マキナに限ってねぇ。」
それはそれでどういう意味かと問い詰めたいところだが、ここは黙っておこう。
私だって騒ぎを大きくしたいわけじゃない。



「と、言うようなことがあるので金輪際私にも部室にも近づかないでいただきたい。」
「うひゃー、女って怖いっすね。」
「黙れ、元凶。」
今日も今日とてやってきた東方仗助に私は釘を刺した。
「私なんかに愛想振りまく元気あるならあの子達にしてあげなさいよ、泣いて喜ぶわよ。」
「いや、別に愛想振りまいたわけじゃ」
「ここに居させてもらうために私に取りいろうったってそうはいかないんだから。大体ここは部室なの、本来関係者以外立ち入り禁止なわけ。ご理解いただけますか?」
「先輩の私室みたいっすけどねー。」
「だまらっしゃい。本読むんだから出てってよ。」
「まぁまぁ、まだ暗くなるの早いですし先輩一人で帰るの危ないじゃないっすか。ボディガードだとでも思って」
「必要ない。」
まぁなんだかんだで毎回付きまとわれるんだけど。
こいつの場合むしろ柄の悪い方々に絡まれる可能性があるんじゃないかと毎度気が気じゃない。
「静かにしてるんでー、頼みますよ。」
「男に二言はないわよ。」
「げっ、やっぱ今のは言葉のあやで」
「…。」
「すんません。」
やっと黙ることにしたらしい東方仗助に満足して、私は本の世界に没頭することにした。


「ふぅ。」
小説を切りのいいところまで読み終わり顔を上げると下校時刻の少し前だった。
これ以上遅くなると運動部とぶつかって混雑するので早く帰ろう。
東方仗助は本当に静かだったな、帰ったのかな。
暖かくなってもまだ4月の為、外はもうどっぷりと暗かった。
「あれ。」
ドアから死角のところで、帰ったと思われていた彼は寝ていた。
それはもう、気持ちよさそうに。
一瞬起こすのを躊躇ったが置いていったら部の責任になる、起こさなくては。
「おーい、帰りますよー。」
「ん…。」
肩をゆすった程度じゃ起きないようだ。
今度は頬をぺちぺちと叩いてみる。
「起ーきーてーよー…」
「ん、う、…うわわっ!」
「ほら、帰るよー。」
文字通り飛び起きた彼に荷物を渡す。
「あ、あざっす。」
「あれ、ほっぺ痛かった?ごめんね。」
頬を押さえて何か考え込んでいるようだ。
「いや、別になんでもむしろごちそうさまっていうかってかなんつうか。」
「日本語で喋って。」
「はい…。」
なんか妙にしおらしい。静かな分此方としては好都合だが。
何はともあれ、活動終了である。


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