嘘つきつつき
「ねぇねぇジョルノー」
せっかく家まで遊びに来た彼女を放置して読書に耽るジョルノに私は声をかけた。
しかし彼から返ってきたのは聞いてるのか聞いてないのかわからない気のない返事ひとつきり。
「暇だよー」
返ってきたのは、ふぅーんというこれまた気の抜けた返事。
先ほどと寸分の変わりもない返事である。
まぁもともと今日遊びに来る約束なんてしてませんでしたしね、暇すぎて押しかけただけなんだけどね。
快く部屋に招いてくれただけでもありがたい話ではあるが、これじゃあ結局暇であることに変わりがない。
「この前ねぇ、トリッシュとミラノまでショッピングに行ったんだけどね…ジョルノ聞いてるー?」
いや、「ふぅーん」じゃなくてですね。
私はここで問うているのはイエスかノーなんですよ。
まぁある意味でそのどちらであるか示してくれているわけですけどね。
「…でね、セールを狙っていったつもりだったんだけどね。ミラノじゃもう何処も冬物ばっかりでセールが終わっちゃってたの。さすがファッションの街だよね。最先端だよ」
ネアポリスではまだ秋物セールをやってるっていうのにね、と続ける。
まぁ素敵なファーコート買えたからよかったんだけど。
ジョルノは黙々と目で文字を追っていた。
ついには無視ですか。
そんなにその本面白いですか、読書の秋なんて糞喰らえだ!
「…おーい」
生憎私には壁に向かってしゃべる趣味はない。
割とかなり寂しくなってきたぞ、この野郎。
「おーい…」
寂しさはどんどんと増していき、それに比例して声も力ないものに変わっていく。
ジョルノは私の事なんてどうでもいいのだろうか。
本の方が大事なんだろうか。
そう思い始めたらなんだかとても不安になってきて、思わず漏れた言葉は空気に溶けるくらい小さなものだった。
「…ジョルノだいすき」
「すみませんマキナ、よく聞こえませんでした。今のところだけあと200回くらい繰り返してもらっていいですか?」
さっきまであんなに熱心に読んでいた本からあっさりと顔を上げて、良い笑顔でジョルノはのたまった。
「なっ、」
なんて奴だ!
(…同じこと繰り返すの嫌いなんじゃなかったっけ?)
(無駄なことならね)