終始馬鹿



(少し、回想してみようか。)



拝啓、親方様。
空から中年男性が降ってきました。
私を天空の城にでも導いてくださるのでしょうか。

正確に言えば彼が落ちてきたのは穴なんて開いていないはずの我が家の天井なのですが。

「と、いうわけであなたは誰ですか」
「なんだ、ここは…ついにイタリアですらなくなったのか…」
こんな狭い部屋がイタリアの家なわけが無い、小さくそんな失礼な呟きを目の前の男はしやがりました。
「あの、」
「お、俺の傍に近寄るな!!!」
「…」
大丈夫かな、この人。
不法侵入者であり不審者でもある男性の方が、何故被害者であるはずの私に怯えているのだろうか。
考えても答えなんて出なかった。
その間も彼は死にたくないだの次は何処からだのブツブツなんかを呟き続けている。
まずは落ち着いてもらおうか。
なんで不審者相手に私が気を遣わなければならないのかという疑問を抱かないわけではないが、このままじゃ二進も三進も行かないだろう。

「あの、どうしたら落ち着いてくれますか?」
私の言葉を無視して、彼は周囲を絶えず警戒している。
この部屋に危険物でもあるというのだろうか。
あぁ、あるとしたらあの無駄に重い図鑑の入った化粧箱か。
あれが頭に直撃すれば首を負って死ぬだろうが、アレは今本棚の一番下に安置されている。

せいぜい小指をぶつけて悶えるくらいだろうか。
そう天井の方を見上げると、彼の頭上にある棚の上に不安定に置かれた件の化粧箱が見えた。
何故あんなところにあるのか、私はあんなところに置いた記憶は無い。
何より注目すべきはその箱が今にもバランスを崩して下でしゃがんでいる男性の頭の上に落ちて来そうだと言う点である。
「あ、危ないっ!!」
「なっ!?…ああ、上か…」
指を差してそういえば、男性はすぐに箱の存在に気付いたようだった。
それと同時についにバランスを崩して落下する化粧箱。
なのに、先ほどまでの警戒心は何処へ行ったというのであろう。
彼は全てを諦めたような顔で、まるで死ぬ事を知ってたみたいに。
手で頭を守ろうともしないで、迫り来る死を他人事のように眺めていた。
「ちょ、」
かといってこっちは目の前で死なれたら溜まったものではない。
というか私が殺したと疑われるかもしれないし、人が死んだ家として近所で噂になるのは必須であろう。
それに疑われず秘密裏に全てが終わったとしても、半裸の男性を連れ込んでいたという事実が残ってしまうのは大変いただけない。
あまり使いたくは無かったが、私は奥の手を使う事にした。

「デッド・バイ・エイプリル!!!」
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