背伸びしても届かない。



「…承太郎は背が高いね…。」
「…気にするな。」
「承太郎は、優しいね。それに加えて、…背が高い。」
「…やれやれだぜ。」
俺は隣で盛大にため息をつく幼馴染に頭を痛めた。

幼馴染のマキナは生粋の日本人である。
子供の頃は大差なかった俺たちの身長は、第二成長期の頃からぐんと離れ始めた。
今では奴の頭は俺の胸と同じくらいである。
そのことを本人は酷く気にしているらしく、今回の身体測定では名誉を挽回すべく牛乳を飲み続けていたらしいのだが―。
「もう伸びないの…?」
結果は去年と寸分変わらなかったらしい。
「この歳になればな。」
もう俺達も高校生だ。今から身長が伸びてもそれはそれで困る、と思うのだがここまで凹んでいるマキナを見るのは久しぶりなのでかける言葉が見つからない。
「承太郎、身長分けて・・・。ていうか何でそんなにデカイのよ!」
奴は丁度掴みやすい高さにあると言う俺の学ランの鎖を躊躇なく引っ張る。
「千切れるだろうが。」
学ランが伸びたら困る、ましてや破れたら勿体無い。俺はすぐさまそれを振り払った。
「…そっか、承太郎はハーフか。」
なにやら自己完結したらしい。
「私将来、絶対外国人と結婚する!ねぇ、誰か良い人いない?優しくて面白みがあって…いやこの際もう外国人ってだけでいいからー!」
一瞬、エジプトへの旅を共にしたお調子者の某フランス人が浮かんだが、紹介する気は起きなかった。
「私ね、子供をこんな惨めな目にはあわせないんだから!目指せ身長170cm越え!」
「やれやれだぜ。」
俺にしとけといえないあたり、妙なところで奥手な自分が情けない。

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