鋸草



「お、億泰くん!」
「あ?どうした。」
声が変にうらがえちゃった。
もうやだ死にたい。
出鼻を挫いた気持ちで一杯の頭は、今すぐここから退散することしか考えてなくてどうにも言葉が続かない。

ここまでの計画は完璧だったのに!


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今日は購買は臨時休業。
私の想い人、億泰君は毎日購買に走っている。
彼は抜けているところがあるので(そこも素敵なんだけど!)きっとその事を忘れているであろうと私は踏んだ。
案の定、お昼休みに購買に走った億泰君は肩を落として帰ってきた。

よし。
私は自分のお弁当にしてはいささか大きなそれを持って彼の元へと近づいた。



そして冒頭、私の頭の中は既に敗戦ムードである。

「あの…こ、これ良かったら!お弁当作りすぎちゃって…た、食べてください!!」
「マジで!?ありがとな!!」

しょぼくれた顔から一変、太陽みたいな笑顔が私に向けられた。

「いいのか?お前の分じゃねーの?」
「ううん、今日お父さんのお弁当要らない日なのに間違えて作っちゃったの。わ、私も処理に困ってて、そういうわけだから気にしないで…そ、それじゃあ!」

あらかじめ準備しておいた言い訳をして、その場を立ち去る。
臨時休業の張り紙が出てからこの一週間、考えに考え抜いた言い訳は、不自然ではなかっただろうか。
後悔も反省もたくさんだけれども、それでもお弁当を受け取ってくれたことがうれしくて、自分の席へ戻る足は浮足立つ。
頬もどんどん緩んできちゃって、口の端から気持ち悪い笑い声が出てしまいそうなのを必死に抑える。
ああ、もう…生きてて良かった!!

ミッションコンプリート!

(以上、私の恋愛戦争最前線であります。)



ノコギリソウ:恋の戦い



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テーマ「人外ファンタジー」
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