桃
「ねぇ、ジョルノ!ねえったら!」
「一回呼べば分かりますよ、無駄なことしないでください」
それでも彼女は無邪気に笑いかけてくる。
「ジョルノ、大変なのよ!」
「僕はあなたの頭の中のほうが大変だと思いますよ。数学で3点なんて、ジャポーネの漫画じゃないんですから」
彼女はそんな僕の嫌味にも眉ひとつしかめない。
あんまり懐かれているものだから、ついつい少し邪険に扱ってしまう。
これでもレディの扱いは心得ているつもりなのだけれど。
きっと、それでも彼女は絶対に僕から離れていかないという確信があるから。
いや、それは驕りなのかもしれない。
それでも。
「そうなのよ、テストに全然身が入らなかったの」
「もともとそこまで出来た頭じゃないでしょうけど」
「そう、そういえばそれで、思ったの。大変なのよ!」
僕の嫌味はそもそも彼女の耳まで届いているのか、少し心配になる。
「なんですか、太陽が西から昇りでもしたんですか?」
僕が何を返してもあんまり楽しそうに話しかけてくるものだから、ついつい言葉が固くなる。
それでも僕はしっかり彼女の言葉に耳を傾けていて。
なんでだろう。
「それも大変だけれど、違うのよ!私あなたに夢中みたい!」
そうか、僕も彼女に夢中なのだ。
(突き放しても、ついてきて。)
モモ: 恋の奴隷、あなたのとりこ