12×12通り



「またいるし。」
「ちわっす。」

当番の教室掃除を終え部室に行くと、我が物顔の東方仗助が部室で本を読んでいた。

「珍しい、アンタも本読むのね。…てなんだ、雑誌か。」
「なんだとはなんすかー。れっきとした本ですよ。」
「そうですねー。」

確かに雑誌は文芸誌を中心に読み応えのある物もあるが彼の読んでいる雑誌はファッション誌であり、今彼が読んでいるのはまさに(気が早いことこの上ないが)今夏のお勧めアイテムのページである。
写真ばかりで文字なんて見出しと商品の値段やらブランドやらだけだ。

「マキナ先輩は何座っすか?俺はふたご座なんですけどぉ。」
荷物を置く私に彼が雑誌を持ち上げて見せたページにはデカデカとしたピンクの文字が躍っていた。

「相性占い…?」
「はい。何座っすか、てか誕生日とか。ついでに血液型とか。」
「…アンタと一番相性が悪い奴。」
「…。」

よし、静かになった。
「…。」
ちらと、取り出した本を開く前に東方仗助の方を窺うと捨てられた子犬のような視線を此方によこしていた。
無下に扱いすぎただろうか。

「わ、悪かったわよ。私の誕生日は」
「や、やっぱいいっす!!!」
「は?」
「いや、マジで相性最悪だったら立ち直れないって言うか。」
「女々しいわね。」
「だってマキナ先輩とはもっと仲良くなりたいんすよー。それなのに相性最悪ってなったら、きついっす。」
「そんなにここが気に入ったわけ?」
「…アンタ本当に文芸部員っすか?」
「どういう意味よそれ。」

失礼な奴だ。そうじゃなかったら私はどうしてここに居るのよ。
なんか盛大にため息つかれたし、幸せ逃げるわよ。
東方仗助はまた雑誌を見始めた。
さて、私も本読むかな。

「先輩の私服ってどんなっすかー。」
「…。」
さて、どの本から読むかな。
あ、これ作者のほかの作品が面白かったんだけどこれはどうかなー。
「こんなっすか?あーでも先輩こっちも着てそうだなぁ。」

前回はサスペンスだったのに今回はファンタジーか、色々書いてるんだなぁ。
「やっぱワンピースっすか?いや、ワンピースは男としてもロマンなんで」

ファンタジーと一口に言っても内容は多岐にわたるし、世界観とか好き嫌い分かれるからちょっと読むの怖かったり。「あ、ミニスカも俺結構好きなんすけど、長めのほうが清楚な感じしていいっすよね。」
「いやもう黙れよ。」
「暇なんすよー。」
「…わかったから、話すからその気持ち悪い妄想語りはやめてください。」
「マジっすか!よっしゃ、何はなしますか。」

ったく。まぁちょっと本を読む踏ん切りもつかなかったし付き合ってやるとしますか。

(よし、なんか面白い話してよ。)
(む、無茶振りっすよ…!)
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テーマ「人外ファンタジー」
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