06
「これは……イーブイ?」
「え。イーブイって茶色じゃなかったっけ?」
「色違いのイーブイは白銀の毛並なんだよ」

色違いのポケモンってとても珍しいよね? 賞金をかけているテレビ番組があるくらいだし。そんな珍しいものを私たちに……? 不思議に思った私と金髪くんは2人を見る。

「うちの研究所は、あらゆる進化の可能性を抱くイーブイと、旅立つ新人トレーナーの可能性を掛けている」
「最近生まれた子たちなの」

にっこりと愛らしい笑顔を浮かべたセツナちゃんはイーブイを1匹抱えて、眼帯くんに渡した。それを受け取った彼は、何とも言えない表情でセツナちゃんと渡された小さなイーブイを見比べていた。

「きっと貴方は生まれたての、こんなすぐにやられてしまいそうな弱いポケモンなんていらないって考えているね」
「……新人トレーナーには火・水・草のどれかを貰えるって聞いていたのにがっかりしているだけだ」

眼帯くんは否定的な言葉とともに、渡されたイーブイをセツナちゃんに押し付ける。しかし、イーブイの頭を優しく撫でるだけで受け取ることはしない。

「最初から否定的だと前に進めないよ」
「ハッ。ずいぶんと偉そうな言葉だな」
「それに、イーブイは進化条件を満たすのは難しいけれど、育てればとても強い子になる。……それとも、最初から強いポケモンを渡されないと自信ない?」

可愛らしく首を傾げて発せられたのは、あからさまな挑発。流石にこんな挑発に乗る人は……。

「なんだと?」

いた、目の前に。今までも不機嫌そうだった表情が更に険しくなった。対するセツナちゃんは臆することなく続ける。あ、これは第一印象撤回しなくては。この子、全然気が弱くない。この子人見知りじゃないよね? 人見知りなら初対面を相手に挑発なんてしない。

「自分で強くなる自信がないから、人を頼って楽に強くなろうとしているんじゃないの?」

そういう子はいつまでたっても強くなれないと思うな。困ったような笑顔になる。眼帯くんは何かを言いかけて、口を閉ざす。きっと反論する前に少し背伸びをして「周りの景色を見ながら、ゆっくりと旅をすれば誰だって自然と強くなれよ」とあまりにも優しい声色で言ったからだろう。

「こほん。言いたいことは様々だろうが、積もる話は後にしてもらおうか。このイーブイたちをどうするかは君たち次第だ」
「1つ質問なのですが。貴重な色違い、しかもイーブイをどうして僕たちに?」
「この子たちのモンスターボールはここにある。後はセツナくん、任せたよ」

金髪くんの質問に対して、ユノさんは考える素振りすら見せず、部屋を出ていった。ここまで清々しい程の無視をされると、これ以上の追究はし辛くなる。私の疑問を代弁してくれた金髪くんは再びその質問を口にすることはなかった。
そんなユノさんを見送ったセツナちゃんは「人に丸投げするところは博士そっくりだよね」と苦笑しながらヘルガーの頭を撫でた。ヘルガーは主に呆れたようにため息をついて同意する。

「んーっと。私、この後少し大事な用事があるから。旅立つのは明日の早朝でいいかな? 急いでいる子もいるみたいだけど、旅支度は念入りにする必要があるし」

明日の早朝というのも随分急だけど。セツナちゃんが言う通り、眼帯くんは初め見たときから一刻も早くという様子だし、妥当なところかもしれない。

「異論はなさそうだね。じゃあ、明日の朝にヒダタウンの出口前で集合ね!」

それにしてもセツナちゃんの笑顔は眩しいな。終始不機嫌な表情をしている誰かさんとは大違いだ。


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