05
「この子はセツナ。少し人見知りな上に、緊張しやすいところがあってな。噛むことも少なくはないが気にしないでくれ」
「初めまして、セツナです」

そう言いながら私たちにむけてぺこっと頭を下げる。そしてすぐに「私、そんなに噛みませんよ!」と頬を膨らませながらユノさんに訂正を求めていた。なんと言うかその姿も……小動物系で可愛い。あ、この世界風に言うなら進化前の小さなポケモンかな。我ながら分かりにくい例えだ。

「……いい加減話を進めてくれないか。これ以上時間を無駄にしたくない」
「君は本当にせっかちだなあ。もう少しのんびりと人生を楽しむことを覚えるといいよ」
「ユノさん。子供相手に人生について語るのはどうかと思います。あと、私もこの後予定があるのですが」
「ああ、それはすまない。セツナくんも多忙の身だしな。じゃあ、簡単な説明だけしようか」

こほんと咳払いをしてユノさんは私を含めた3人を見る。その目は真剣なもので、私は反射的に姿勢を正した。金髪くんと眼帯くんはそこまで緊張していないみたいだけど。

「君たちを呼び出したのは、最初にユサくんが言った通り。今年の新人トレーナーに選んだからだ」
「選んだって……」
「ちなみに選出方法は、籤引きだ」
「えっ」
「安心しろ。親御さんに旅立ちの許可を頂けた子たちだけ籤の対象にしているからな」

そこじゃない。安心する部分はそこじゃない。そして父よ、もしかして私が呼び出されていた理由知っていたんじゃない? それなら教えてほしかった……いや、あの人なら忘れていたという可能性もある。というか、そうとしか考えられない。

「……子供だけで旅するって危なくないですか?」
「遅刻してきた上に、ごちゃごちゃうるせぇ女だな」

舌打ちをして毒づく眼帯くん、感じが悪いなあ。……遅刻したのは事実だから文句も言えないのだけど。

「子供だけじゃないぞ。この研究所は他の地方と比較すると少し特殊な部分もあるが、ちゃんと初心者用のポケモンも渡している。つまり、ポケモンと一緒ということだ」
「は、はあ」
「しかし、1番道路は険しいからな。君たち1人1人で乗り越えるのは困難だろう。そこで、シマイタウンに到着するまでは4人で行動してもらう」
「4人ということは、僕といっちゃん。それにこの女の子と……」
「セツナくんだ。彼女が一緒ならたいていの野生のポケモンは大丈夫だ」

私たちの視線がセツナちゃんに注目する。セツナちゃんは「確かに私の家族は強いですけど、あまりハードル上げないでください」とあわあわしていた。慌てているのだけど、この子強いことは否定しなかった。気の良さそう、という印象は間違いだったのかな?

「細かな説明は割愛していいだろう。何かあったら道中にセツナくんに聞くがよい!」
「私に丸投げですか!?」
「ぐだぐだと説明するより、その都度聞いた方が効率はいいだろ? そんなことより、彼らの相棒となるポケモンを渡してあげようじゃないか」

ユノさんはこれ以上説明する気がないらしく、セツナちゃんが持ってきた箱をがさごそと漁っている。丸投げされたセツナちゃんは肩を落としていた。見たところ、私とあまり年は変わらないだろうに苦労しているのかな。

「それではお待ちかね。君たちのポケモンとなる子たちをお披露目といこうじゃないか!」

ばーんっと私たちの目の前に出されたポケモンは、白銀色のふわふわした毛玉だった。


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