04
「3人揃ったことだし、説明を始めようか」
「あ、やっぱり私待ちでしたよね。すみません」
「いいよ、いいよ。住所みたところ、君の家からうちの研究所までは随分距離があるみたいだしね」
「……俺たちは3時間無駄にするはめになったがな」

しょんぼりとして3人のもとに寄ると、わりと直球で眼帯くんに責められた。その隣にいる金髪くんは爽やかな笑顔で「事故にあったとかじゃなかったのだから良かったよ」と言うものだから、罪悪感はますます募るものだ。

「おっと、説明の前にもう1人この場にいないと駄目だったな。私としたことがうっかり忘れていた。閃。新人トレーナーが集まったからあの子を呼んできてくれ」

ユノさんがそう頼むと、ヘルガーは頷いて部屋を出ていく。どうやらあのヘルガーはセンと言うらしい。そういえば最近は自分のポケモンに名前を付けるトレーナーが増加しているとテレビで言っていたな。あのヘルガーはユノさんのポケモンなのだろうか。

「あの、遅刻した身で早速質問するのもあれなのですが。私はどうして呼び出されたのでしょうか?」
「……君」
「はい?」
「まだこんなに小さいのに礼儀が正しいな! そこにいる眼帯くんは来て早々、挨拶も無しにポケモンよこせと言ってきたというのに!」

何故だか知らないが褒められた。あ、そっか。自分にとって、目上の人に対してはこれが当たり前な態度だけど、よく考えたら14歳の子供がこんな堅苦しい言葉遣いをしていたら、礼儀正しい子に見えるのか。普段接する人がご近所の人たちばかりで、そんなこと気にもされなかったから今更ながら気付いた。

「すみません。いっちゃん、気が荒くてせっかちさんだがふっ」
「ちゃん付けするな、キモい」

いっちゃんなんて親しげに呼ぶくらいだから、この2人は仲が良い方なんだろうな。呼ばれた眼帯くんは物凄く嫌そうな顔をして金髪くんの鳩尾殴っているけど。でも、金髪くんが丈夫だからか、眼帯くんが非力だからかのどちらかのようで、金髪くんは大したダメージを受けている様子はなくへらりと笑ったまま。

「僕といっちゃんはね、今年の新人トレーナーに選ばれたから博士に呼び出されたんだ。君も同じ理由だと思うんだけど……」
「私、新人トレーナーに選ばれるようなことしていませんよ?」

金髪くんがきらきらとした笑顔で聞いてくるものだから思わず畏まってしまった。何この子、ちょっと怖い。なんでこんなきらきらしているの。見た目は子供でも中身はちょっとばかし汚れた大人な私には眩しいよ。

「それについての説明もまとめてするよ。すまないな、どっかの馬鹿野郎が適当な手紙を出したものだから混乱を招いただろ」
「いえ、その」

ユノさんの言うどっかの馬鹿野郎というのは恐らく博士のことなんだろうけど……随分と酷い言いようだ。苦笑しか浮かべられない。

「しっ、失礼します!」

微妙な空気で、微妙なテンポの会話を続けていると、綺麗な濡羽色をした女の子が、大きな箱をもってよたよたと危なっかしい足取りで部屋に入ってきた。黒縁眼鏡が良く似合う、気の弱そうな子というのが第一印象。

「し、新人トレーナひゃん用のポケモンお届けにきまひた!」

あ。駄目だ、この子。可愛すぎる。
カナンちゃんとはまた違った可愛さに、私の心は射止められた。


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bkm
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