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世の中には不思議なことで溢れている。そう、例えば今私がこうして息をしている世界にはポケモンが存在していることとか。
成人式を終えて、苦労の末に卒業をして社会人となった年にまさか交通事故に遭うとはね。しかも相手はダンプカー。痛みを感じる間もなく死にました。ええ、死にましたとも。死んだと気付いたのはこの世界に生まれ変わってからのこと。そのことを思い出したのは3歳の誕生日を迎えた日のこと。急展開すぎてショックを受けている暇もなかった。不幸中の幸いはおむつを替えられたりする時期に自我が芽生えなかったこと。
両親や友人たちとの死別に関しての悲しみなどは、時が経つに連れて次第に薄れていった。私はもともと浅く広く人脈をもつタイプで、その場では仲良くやっていくけど深入りはしないから距離を置くとともに連絡を取らなくなるばかりだし、そこまで引きずっていない。つまり所詮その程度の仲だったということね。唯一の心残りは両親よりも先に逝ってしまったこと。親不幸な子供でごめんなさい。私は今、スグハという新たな名を授かり元気に生きています。

「……なんて寝る前にいろいろ考えてたら見事に寝坊した」

ヤヤコマの美しい歌声で起きたところまではいい。なんて清々しい起床なんだろう。問題は部屋にあるマルマインの壁掛け時計の針が11時を示そうとしていることだ。今から身だしなみを整え、朝ご飯を食べていると研究所に着くころには12時を過ぎるだろう。集合は9時だったはず。これは何をどうしようと遅刻である。どうせ遅刻ならゆっくりしてもいい……わけないよね。

「お父さんは仕事に行っちゃったんだな」

父の朝は早すぎる。だから起こされなかったことに対して文句を言うことはできない。仕方がない、朝ご飯は抜きにしよう。どうせそこまで込み入った用事ではないだろうし。
服はどうしようかな。自転車飛ばすし、スキニでいいか。動きやすさ重視で。髪の毛は適当にしばっておけばいいよね。15歳の子供だとお肌つやつやだから少しの外出にわざわざ化粧とかしなくていいのが素晴らしい。若いって素敵。

「お母さん、おはよう。行ってきます」

テーブルの中央に飾ってある花瓶の水を変えてから、花瓶の横に置いてある母の写真に向けて挨拶。さて、研究所に行きますか。


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bkm
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