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ポケモン。それは。100を優に超える膨大な種族たちを総称した呼び方。自然界を操るような力から、自らを強化するような力を持った不思議な生き物。これは某ゲーム会社が開発したソフトに登場するキャラクターであり、現実には存在しない。子供から大人まで想像を絶する人気を誇り、長いこと愛され続けてきているもの。
私が知っていることはこの程度。年が離れた従弟たちが盛り上がっていたのを見て少し知ったくらい。流石に社会人にもなってから小さい子たちが遊んでいるゲームに手を出すのはあれだったからそれ以上の関心はなかった。そもそもゲームの面白味というのがよく分からない。画面見ながらぽちぽちと小さなボタンを押して選択するだけでしょう。それの何がいいのか。

……などということを考えていた時期が私にもありました。

「スグハ。そろそろ寝なさい」
「このバトル見終わったら寝るー!」

スグハ、14歳。只今テレビで放映されている『アイドルトレーナー・カナンVS街角のトレーナー!』に釘付けです・カナンちゃんに挑戦して、勝利したトレーナーには賞金100万円が与えられるけど、これが難しいのなんの。カナンちゃんってば可愛いだけでなく、バトルも強い。しかもただ相手を叩きのめすだけではなくて、技を観客に魅せるような戦いをしている。これはもうファンになるしかないよね。

「ポケモンもだけど、やっぱりカナンちゃんが一番可愛い……」
「お前なあ」

テレビの前でカナンちゃんLOVEと書かれたうちわを握りしめる娘を見て呆れる父。言いたいことは分かる。でもこればかりは仕方がない。バトルに勝利して決めポーズとともにお決まりの台詞。「カナンに勝とうなんて10年早いぞ!」ばっちりウィンク付きで。可愛すぎるぞ。私も挑んで、この台詞を言われたい。カメラ目線で「カナンはいつでも君の挑戦を待ってるよ」なんて言うものだから我こそはと両手を高らかに挙げて立候補したい。ポケモンもっていないんだけどね!

「終わったなら寝ろよ。明日は朝早いんだろ?」
「あー、そうだった。研究所から謎の手紙が届いてたんだった」

明日の午前9時に研究所に来るように。といった内容だった。何かした覚えはないのに。そもそも研究所って、同じ町にはあるけど結構遠いから近付いたことすらないのに。

「ポケモン研究所というだけあって、ポケモンたくさんいるんだろうなあ」

うん。ちょっと楽しみかも。


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