目が覚めたら医務室。腕についてる安物の時計に目を通したら最後に見た時間から実に5時間が経っていた。サラリーマンの休日における5時間は大変貴重な物であり、俺の人生においても5時間はとても大事な物だ。

何故かズキリと痛みを発する後頭部に疑問符を飛ばしながら今まで寝かされてたであろう白いベットから起き上がればそれと同時にドアが開く。


「あぁ、目がお覚めになりましたか。良かった良かった、あんまりにも起きる気配が無かったので打ち所悪く植物化してしまったんじゃないかとヒヤヒヤしていたのですよ…」


そういって気味悪くクスクス笑う長い銀髪の医者(と思わしき人物)にはぁ、と生返事を返せば医者は俺が此処に運ばれた経緯を説明してくれた。

5時間前、暇な休日の暇潰しをするべく街に繰り出した俺は例のBASARAショップの前で携帯観察をし、場所を移そうと去った直後何かから逃げてきたと思われる何者かと正面衝突、そして転倒後頭部強打による気絶。何者かはそのまま逃走依然として行方不明。だそうだ。ふざけんなちくしょう。


「検査の結果残念ですが特に異常はありませんでしたので帰って頂いても結構ですよ」

「あー、そうすか、はい」


ホントにこいつは医者かと心の中で悪態をつきながら外に出た。真冬の空はこの時間ともなると真っ暗で汚ねぇガスのせいなのか知らんが星の一つも見えやしない。息をするたびレンズ越しに白い吐息が流れ消えていく。寒い。


「(おでん食いたい…)」


コンビニ寄って帰ろうかな、と残り少ない休日に思い馳せて自然に歩を速めたらガサリ、と路地から音がした。今思えばこの時これを無視しとけば俺はあったかいおでんとランデブー出来たのにあの時の俺はその音に足を止めてしまった。馬鹿が。

路地は人が一人やっと通れるくらい。何度も此処は通るがこんな路地あったか?と思わず考える程度に普段だったら気にならない様な、まぁお世辞にも綺麗とは言えない路地。にゃんこだったら連れ帰ろうかな、にゃんこ可愛いよなにゃんこ、なんて淡い期待を抱いて隙間を覗けば猫よりでかい二つの目玉と目が合った。

5時間前、最後に見た鮮やかなオレンジ頭が其処に居た。


(路地裏ランデブー)

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