「晋さーん、ご飯出来たよおまたせ」
「…ん、今いく」
佐助が来て一週間、何故こんなにこいつは溶け込んで居るのかについては俺が聞きたい。
B-115、BASARAブランド通称「モデル/佐助」が家に来たのは一週間前、路地裏で倒れたのを仕方なく連れてきたのがきっかけ。連れてきて目を覚ました当初は部屋の隅っこに毛布を引っ張ってひたすら此方を見て警戒していた。正直ベットが解放されればどうでも良かったので無視して飯の時間辺りに適当に炒飯作って近くに置いて、気付けば皿が空になっている。そんな生活を繰り返してたら向こうから干渉して来たのが4日前の事。
あいつの第一声はありがとうだのどうして助けただの可愛げがあるものでは無く、落ち着いた様子で「どうして逃げたか気にならないの?」だった。
「聞いて欲しかったのか?」
「…そういう訳じゃないけど」
「そういう訳じゃねぇなら良いだろ別に。興味ねぇし」
「変わってるって良く言われない?」
「お前は失礼だと良く言われるだろ」
「……言われる」
そう言ってクスクス笑う携帯はまるで人の様で。
そして次の日には佐助自ら台所で包丁を握る様になっていた。理由を聞けば「炒飯飽きた」とか何とか。実に失礼な携帯である。
「…そういやよ、」
「ん?なに?おかず美味しくない?」
「いやおかずはうめぇよ、話をきけ」
「んふふあんがと、で、なぁに?」
「お前確か逃げてきたんだよな?それは別にどうでも良いんだけどよ、それを匿ってる俺ってなんか罪に問われたりとかしねぇのか」
「あー、どうだろね。まぁでも今GPSは切ってるし別に晋さん俺様使ってネット繋いでないし向こうから俺様が何処に居るかはわかんない筈だよ」
「俺は前科作るのはごめんだぞ、俺が危なくなったらでてけよな」
「うっわ薄情!晋さんが居ない間俺様家事やってるのに」
「食費は俺持ちだろが。お前は居候だボケ」
「鬼!悪魔!…まぁ見つからない様に善処しますけども」
おかわり、と茶碗を突き出せばはいはい、と慣れた手つきで白米をよそる同居携帯に若干の居心地の良さを覚えている事に気付かないフリをして俺は酒でおかずを流し込んだ。
(熟年夫婦の風景)