「どうしてこうなった」

まさにそんな感じ。外よかいくらか暖かい我が家のベットには煤汚れたオレンジ頭。とりあえず冷えきったまま寝息を立てているこいつをどうにかすべく、電気毛布をかけてヒーターをつける。色々やった後、ソファーに深く腰かけ一息ついて呟いた。


「どうしてこうなった」


30分前まで遡ろう。路地でかち合ったオレンジの目玉は今ベットで眠りこけるこいつの物だった。…そこまでは良いです、別に。問題はそいつが半袖だったことと、それから見える腕に入れられたBから始まる115のナンバー。Bは紛れもなくBASARAブランドの証明、目の前の奴はにゃんこでも人でもなく携帯だった。

オレンジ頭は街灯がなくとも分かる程に青ざめていて、それは寒さからなのか、もしくは姿を見られたからなのか。まぁ多分両方の理由からか自分の体を守る様に白い手で自分を抱きながらジリ、と一歩引きずさった。…が、膝がカクンと折れて本人も驚いた様に呆気なく座り込む。


「!ちょっと、お願い、動いてよ、ねえ」


焦る様に動かない足に視線を向けて、言葉を紡ぐ度に吐き出される息は白い。携帯も息すんだな、なんて何ともまぁ検討違いの事を思いながら「大丈夫か?」と思わず声をかけてしまった。

もう逃げられないとでも思ったのか、オレンジ頭はキッと薄汚れた顔で睨み付けて必死に威嚇。それがなんだか野良猫のようでおかしく思った。無意識に一歩路地に入って頭をくしゃりと撫でて見れば、オレンジ頭は驚いた様に目を見開いて、小さく「なんで」と呟いて気絶。それに驚いたのは俺だ。携帯だが生きている(…のか?)それを放置する訳にも行かず、着ていたコートをオレンジ頭に着せて、とりあえずおぶって家に連れてきた。途中コンビニから見えるおでんに涙を飲みながら。


「…これからどうすっかな」


冷蔵庫から冷えたビールを取り出して一気に胃に流し込んだ。気持ち良さそうな顔で眠るオレンジの頭を叩きたくなったのはそっと仕舞っておいた。俺のベット返せ。


(ベット使用権の略奪)

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