「さて小太郎ちゃん、君の服を探さねばなりませぬ」
ぶしゅっ、傷にガーゼとマキロンを吹き掛けて絆創膏をペタリ。それを興味深く見つめていた赤毛の彼は小さく首を傾げた。
「え?だって家に住むんじゃねーの?ちげーの?」
「…」
焦る様に更に首の角度をきつくした彼にこっちも首を傾げる。
「だって小太郎ちゃん明らか都民じゃねーし住民票も無さそうだし。何処から来たのか知らねーし…いやまぁ聞く気ないけど。とりま行くとこ無いんだろ?なら帰れるまで家に居なよ、衣食住は任せんしゃい!」
どーん!と胸を張れば暫く小太郎ちゃんは呆けた後、はっと気がついた様に正座だった足を片方立てて俺に傅いた。ただ一つ残念なのは、身体中張られた絆創膏にキティちゃんとプリントがされてなければ最高にかっこよかったであろうと言う事。堪えきれずに噴き出したら小太郎ちゃんが顔を上げてまた首を傾げた。
「筋肉…」
「…」
とりま同居が決定したので服を与えようと、クローゼットをひっくり返して幾つか着させてみる。どうやって着るのかわからない服と甲冑は脱がせて今は上半身だけはだかんぼである。…が、着せた服は筋肉と言う甲冑のせいでどれもぱつんぱつんだ。
そこまで自分は背が低いわけでも肉が付いてないわけでも無いとは思ったんだがな、と妙なショックを受けながら赤くなってしまったシャツの上から腹をつねればぷにぷにとした感触が返ってきた。僕は静かに泣いた。
「あとは去年の浴衣しかないぞ…」
「…」
その後も数着試してみたが結果は同じ。残ったのは暫く着てない黒の浴衣。まぁ浴衣なら多少体型の融通は効くだろうと小太郎ちゃんに着せればそれはまぁ大層ビシッと着こなして下さいまして。俺は一人じゃ締められない帯も見本の様な程にきっちり。
(最近のイケメンはなんでも出来るのかチクショー)
いつの間にか外された兜の下が、傾けられた首につられてさらりと髪を揺らした。