「ねぇ、前から気になってたんだけど仁さんの耳についてるのって何?」


いつも通りの午後。投げかけられた質問は俺に対して。

はて、俺は補聴器でもつけていたかと耳に触れれば自分でも存在を忘れたピアスが指をくすぐった。就ちゃんも気にはなるのかゆるりと視線をこちらに向ける。


「あー、これ?ピアスっていって、特に付ける意味は無いけど若気の至りで開けました」


ぷちっと金具を外して見せればさっちゃんが興味深そうに手に取って、これがあれば化けられても敵味方の区別が簡単につくねぇ、なんて真面目な顔で言うから笑った。


「ねねっ、これ俺様も着けたいって言ったら怒る?」

「いや別に怒りはしねぇけど…なして?」

「化けても俺様って分かる様に、って言いたいけどこっちに来たって記念に、かなぁ。仁さんとお揃いのが良いな」

「しゃあねぇな…ちと待ってな」


お揃い、に可愛さを感じて仕方なく針だの何だのを準備し始めればさっちゃんが嬉しそうに声をあげる。途中、就ちゃんも開けるか?と問えば下らぬ、の一言で一蹴された。風邪の件以来就ちゃんは以前よりそっけなくなった気もするが、最初に感じた壁は薄くなっている。と思う…がピアスには本当に興味が無いのだろう、さっさと寝室に引っ込んでしまった。


「俺のピアスこれしか無いからお揃いならピアッサーじゃなくて安ピンだぞ?」

「よくわかんないから任せるよ」


氷で耳を冷やすと冷たかったのだろうさっちゃんの肩がびくりと震える。そして一思いに耳たぶに針を突き刺せば微かにさっちゃんの眉間に皺が寄る。そして消毒をしたピアスを針と入れ替えれば、さっちゃんの耳に俺と同じ位置でお揃いのピアスが映える。


「おぉーお見事」

「少なくとも一月は消毒な。耳が腐ってもしらねぇぞ」

「えっ腐るの!?こわっ!」


そんなやりとりをしながら、お揃いのピアスとか恋人みたいだなぁ、なんて冗談を言えばさっちゃんからも冗談混じりの声で馬鹿じゃないのと声が上がる。

ピアスを見ながら鏡越しに会話をしているのでこちらからはさっちゃんの後ろ姿しか見えないが、バンダナで上げられた髪から見える耳は冷やしたからか照れているのか真っ赤だったのを見て、何故かつられてこっち迄赤くなったのは内緒。



((やばい恥ずかしい…!!))

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