リビングから聞こえる昼のニュースで目が覚めた。重たい足を引き摺ってリビングに向かえばワイドショーを見ていたさっちゃんと就ちゃんが此方に視線を寄越す。


「おはよござす…」

「仁さんおはよーってももうお昼過ぎだけど?今日は一段とお寝坊さんだねぇ」

「貴様起きている時間より寝ている時間の方が長いのではないのか」

「滅相もねぇ…」


窓の外を見ればすっかり太陽は真上に昇っていた。と言うかもうすでに若干西に傾き始めていた。多少寝すぎてガンガン響く頭を振れば昼飯で作ったのであろう味噌汁が出される。一口啜れば減りに減って背中にくっつきそうな胃袋にすぅっと染み込む。ちょううめぇ…。


「仁さん昨日遅くまで何してたのさ?昨日寝たのかなり遅かったでしょ」

「あれ、さっちゃん起きてたのか?」

「仁さんがベッド乗り込むときにちょっと目が覚めてねー」


味噌汁のお代わりを貰えばじろじろとさっちゃんに疑いの視線を向けられた。就ちゃんは黙っている辺り興味がないのか昨日気付かないまま眠ってたかのどちらかだろう。


「あれこれ言うつもりは無いけどさ、そんな目にクマ作られると俺様結構心配な訳よ」

「すまん…」

「解ればいーけどね」


いつもは俺が撫でる側だが今日は俺がさっちゃんに撫でられて、さりげなく出されたおにぎりにきゅんとした。さっちゃん女の子だったらこれもう世の男性諸君ほっとかねーのに…料理洗濯家事出来て気配りも完璧とかさぁ…!!

…神様ってマジに残酷な。



「いやまぁ隠すつもりは無いんだけどな。丁度良い機会だし君らを今日は開かずの間にご招待しよう…」

「開かずの間、ってあの物置部屋の事?そういや俺様入ったことないや」

「興味無いわ」

「まぁそう言わずに。現代文明の利器をご覧にいれよう」


我が家には小太郎ちゃんも入った事の無い物置部屋、通称開かずの間(呼んでるの俺だけ)が2部屋存在する。1部屋は本当にただの物置きだがもう1部屋は滅多に使わないが実は俺の仕事場である。…まぁ仕事って言って良いのかは激しく謎だけど。


「あ、俺様これ見たことある!パソコンってやつだ」

「さっちゃんだいせいかーい」

「何故三つもあるのだ」

「まぁお仕事上どーしても必要でねー」


机の上に並べられたPC全ての電源を付けて一つのページを開けばさっちゃんと就ちゃんがディスプレイを覗き込む。画面にはいくつも折れ線グラフが並び、上がり下がりを繰り返している。表示された数字は休むこと無く変わり続け忙しない。


「株っつってな、まぁこれのお陰で君らを養えるわけですよ」

「…なんか難しそう」

「それなりに難しいわなぁ」


2台電源を消して残り1台のノートPCを検索ページに切り替える。バーに「画像 太陽」と打ち込めば即座にディスプレイ一面に画像が表示された。


「日輪…!」

「こーやって調べ物出来たり絵を探せたりするんよー。さっちゃんはもうローマ字分かるし就ちゃんも平仮名は完璧だから此処で切り替えれば簡単に調べられるからね」

「俺様やってみてもいい!?」

「どうぞどうぞ、これから使いたい時に勝手に使って良いからね。充電器外せばリビングでも使えるし」


さっちゃんが手元とにらめっこしながら「画像 料理」となんとか打ち込めば太陽の画像が切り替えられて就ちゃんがダメージを受けていた。

そして次の日からは一日中就ちゃんがPCを占領して太陽の画像とにらめっこするのである。


(ちょっと毛利の旦那俺様にもパソコン貸してよ!)
(断る、我は今忙しい)
(こらこら仲良く使わんなら貸さないぞ!)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -