「就ちゃん」

「…」

「就ちゃーん」

「…」

「なーりーちゃーん!」

「…貴様まさかとは思うまいがそれは我を呼んでおるのではあるまいな」

「まさかとは思うけど就ちゃん以外に誰がいる!」


就ちゃんをガムテープから解放する事を条件に、適当に着替えさせて早一時間。多少ブカブカの長袖を着た就ちゃんは飯も食わずに一時間ずっとソファーを占領して外を見ていた。ソファーはテーブルを囲む様に3つあるのでそれは構わないのだが、今日の天気は雨である。…雨が好きなのかな?


「就ちゃんなんでずっと外眺めとるん?雨好き?」

「…」

「おにーさんは雨よりお日さまのが好きだなぁ、あったけーし」

「…貴様に日輪の良さなど解るものか」

「あ、日輪てお日さまの事だったん?んじゃあ日輪の申し子って事は就ちゃんはお日さまの子供なんだなぁ 確か明日は晴れだから元気だしてなー」

「…」


さりげなく頭を撫でようとしたら寸での所で手を払われたけど気にせず洗い物に勤しむさっちゃんの元に行けばカウンター越しに此方を見る就ちゃんが見えた。すぐに外に目をやってしまったけどどうやら天気の話は気を引くのに大当たりだったようだ。


「仁さんも良くやるよねぇ…俺様だったら初対面であんなの言われたら即効見限ってるよ」

「いやぁただのおせっかいさなぁ、それにあの子だいぶさっちゃんに似とるぜ?」

「俺様に!?うっそ冗談よしてよ!」

「さっちゃん此方来たときすぐに俺の言うこと信じてくれたけど腹の中じゃ何もかも疑ってたろ?今はそんなことねーけど初めはそこはかとなく壁があった」

「…俺様絶対バレてないと思ってたんだけど」

「お父さんはなんでもお見通しなのデス。…まぁ就ちゃんも一緒って事さな、ただあの子はちと隠すのが上手すぎて何考えてるかわからん時あっけどそこは気合いと根性」

「仁さんその洞察眼使ってウチの軍で軍師やってくれりゃ出世しただろうに…!」

「おにーさんは引きこもりなので無理でーす」


いやまぁ一応仕事みたいなのはしてますけどね!


「…おい、堺」

「ん、なぁに就ちゃん」

「その名で呼ぶのは止めよ」

「就ちゃんが名前で呼んでくれたら止める」

「…この世界の事を教えよ、我には情報が足りなすぎる」

「話すり替えたな就ちゃん…まぁ別に教えても良いけどきっと就ちゃん此方の字読めないぞ?」

「構わぬ、文献を寄越せ」


洗い物を終えてカウンターから顔をだして返事をすれば元就様はとにかく情報をご所望の様だ。

へいへい、と返事をしてみたは良いが情報と言われても世界史の教科書なんざ無いし何を渡したら良いのか迷ったのでとりあえず新聞とジャンプを渡しておいた。因みにジャンプで情報なんか得られないのを知ってるさっちゃんは静かに腹を抱えて爆笑していたのは内緒。

そしてさりげなく小太郎ちゃんとさっちゃんがお世話になった平仮名カタカナのドリルを机に置いておけば、一時間後に投げ出された新聞とドリルにせっせと目を通す就ちゃんの姿があったのだった。


(…なんぞこれは)
(此方じゃいろはにじゃなくてあいうえおなんだよー、あ、カタカナの他にローマ字もあるから頑張ってね毛利の旦那ぁ)
(こらこら苛めてやるなよさっちゃん)

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