「ねぇねぇ仁さん、この辺りでなんか体動かせる所ってない?おっきな平野とかさ」

「どったのいきなし」

「いやぁ此処に居る間に体鈍らせていざ帰って役立たずじゃあアレじゃない?だから少しでも鍛練くらいしよーかと思って」

「おーぅなるほど、でもあんまこの辺でそういうのは知らねーなぁ…公園はちっせぇし」

「そっか…」

「…あ!いっこ体動かせる所あったぜ、もしかしたら組み手?だっけ?そういうのも出来る所!」

「ほんと!?」


と言う訳で車を走らせやって来たのは都内最大級(らしい)フィットネスクラブ。建物は大きくプール・スポーツジム・ヨガやらなんやらの3練に分かれている。因みに俺は前に「腹筋割りてぇ」と思って一度行ったきりもう行ってない。会員費無駄すぎるな…。

因みにいざ来てから会員証作らんとダメかも、と思っていたがさっちゃんと小太郎ちゃんは今回お試しの初回無料だとかで事なきを得た。


「こんにちは堺様、お連れ様の簡易会員証をお作りしますのでお名前を教えて頂けますか?」

「名前?あー…俺様が堺佐助で、こっちが堺小太郎」

「…」

「ちょっ、さっちゃん!?」

「あら、ご兄弟ですか…?」

「親子ですー」

「さっちゃんん!?」


受付のお姉さんはかなり驚いた顔で「あらまぁ…」だなんて言ってカードに名前を書き込んだ。いやいやいや信じるなよお姉さん…!!


「なんであんなこと…」

「だって猿飛とか風魔なんて名字未来にまであるとは思わなかったしさぁ、親子って事にしちゃえば色々後で楽かと思って。なかなか堺佐助って似合ってると思わない?」

「…」

「俺はこんなでけぇ息子いらねぇよ…あごめん嘘だからそんな目しないで小太郎ちゃん」


お姉さんから渡された会員証を首から下げさせてスポーツジム練へと向かえばとたんにスパーリングの音やランニングマシーンの機械音で満たされ、視界は何処をみても暑苦しい筋肉ばかりである。


「うわぁ女っ気の少ないこと!」

「…」

「こら露骨に嫌な顔しねーの」


正直周りがボディビルダーの様なこんがり肌ばかりで、俺含め比較的肌が白いさっちゃん達は若干場違いである。小太郎ちゃんはまだしもさっちゃんは細い方だしな。…心なしかクスクス聞こえるのは目を瞑る。


「あはー声ちっさくても聞こえてるんだよねー、忍の聴力舐めないで欲しいよ。…ね、風魔ちょっと遊ばない?」

「…」

「さすが風魔、話がわかるねぇ」

「おーい二人とも行くぞー?」

「はいはーい」


なにやらこそこそしている二人を呼んでスパーリングの真っ最中のリングの近くに寄る。少し離れた所には畳が張られていて、こちらは柔道の組み手の真っ最中の様だった。


「これはどういう運動なの?」

「ボクシングっていって、基本的に手しか使っちゃいけねーの。でもまぁ此処は蹴りも有りみたいだから正確にはKー1かな?まぁ武器以外ならなんでもありで気絶させたら勝ち」

「分かりやすくていいねぇ、…ねぇちょっとお取り込み中悪いんだけどそれ俺様にもやらせてくんない?」

「ちょっ、さっちゃん!?」


リングの縁に肘を着いて挑発する様にさらりと爆弾を落とすとリングでスパーリングをしてたマッチョメン達が動きを止めた。それからバカにしたように笑うと一人がリングを降りたのでそれと入れ替わりにさっちゃんがひらりとリングに登りグローブが投げ渡される。


「さっちゃん危ないからやめろって!」

「だぁいじょうぶー俺様かっこよく勝っちゃうからまぁ見てて?」

「っばか余所見すんなっ!」


のんきにグローブをはめてこちらに手を振るさっちゃんに、隙有りと言わんばかりに相手は殴りかかる。…が相手の拳は宙を殴ってさっちゃんはいつの間にか相手の背後のロープにだるそうに寄りかかっていた。


「おっそいなぁー俺様眠くなっちゃう」

「く、くそっ」

「あはー、こっちこっちー」

「っうおっ!?」

「あっ、ごっめーん!俺様足長いから引っ掛かっちゃったぁ?だいじょうぶー?」



「…忍者ってコワイ…」

「…」


その後もひょいひょいとパンチを避け、しまいには相手を足に引っ掻けて転ばせていた。トゲはあるが言葉では謝っているがさっちゃんの顔は楽しそうに笑っている。…こいつ遊んでやがる…!
多分ストレスを存分に解消しているのであろう心なしか黒いさっちゃんに思わずぶるりと震えれば小太郎ちゃんに頭を撫でられた。


「仁さーん、俺様勝ったよー」

「いつの間に!?」

「手加減したんだけど隙だらけの顔面に一発入れたら奴さん伸びちゃってどっか連れてかれちゃったあ。でもこれ楽しいねぇ」


からからとさっちゃんが笑うと俺達同様さっちゃんの立ち振舞いを見ていたギャラリーがざわつく。耳を寄せれば「俺挑もうかな…」「ちょっとお前行ってみ?」などのつっつき合いで、それを見たさっちゃんが「次は誰が俺と遊ぶ?」だなんて楽しそうに挑発する物だから次々と手が上がった。


「…んまぁさっちゃんが楽しいなら良いのかねぇ?」

「…」


リングの悲鳴には気付かないふり。

(あははー、当たりもしないねぇ?もう全員かかってくればぁ?)
(とりあえずさっちゃんは怒らせると怖いのはわかった)


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