「俺様さぁ、ぶっちゃけこっちに来たのはなんか理由があると思うんだよね」
「ほうほう」
「…」
食事が終わって、早速家事を覚えつつあるさっちゃんが入れてくれたコーヒーを飲み一息つくと片付けを終えたさっちゃんが三つある内のソファーの一つに座っておもむろに口を開いた。小太郎ちゃんも自分にも関わる話で気になるのか、テレビへ視線はそのままにむくりと起き上がる。
「俺様此処に来る前は任務終わって帰りだったんだけど、ホントに一瞬で此方来たんだよね。そらもう瞬きの間に!いきなり景色が違うんだもん、ビックリ!」
「そんなに一瞬の間だったんか?んじゃあ小太郎ちゃんは?」
「…」
隣に問えばさらさらとホワイトボードに文字が浮かぶ。そしてボードには「戦の最中、瞬く間」と書かれていて、まださっちゃんは平仮名片仮名はわからないが「戦の最中」と言うのはなんとか読めたらしく酷く驚いていた。
「途中、って事はー…あちゃー、風魔が居なくなっちゃったんじゃ北条負けちゃったんじゃない?」
「え、なんか知らんが大丈夫かそれ」
「どうだろねぇ、…あれ?でも風魔がこっち来たのってもう十も前なんだよね?」
「うん、もう約半月かな?」
「北条の風魔が消えたなんて情報俺様の耳には入らなかったし、だからこそ此方来たとき本気で驚いたんだけど。北条の爺さんが風魔が消えたりして騒がない訳がないし」
「…」
さっちゃんがあれー?と首を傾げて小太郎ちゃんは確かに、と小さく頷く。
「…あくまで仮定だけど、此方と向こうじゃ時間軸が違うのかもな。此方で一週間暮らしたとしても、さっちゃんたちの世界じゃほんの一瞬でしかなかったりとか。もしくは此方に来てる間、あっちは止まってるとか?」
「あ、なるほど。…でも此処って未来なんでしょ?時を越える事は確かに異質だけど時間軸は一緒なんじゃないの?」
「それは少し考えたんだけどよ、俺が知る限りじゃ戦国の時代に迷彩柄、えぇっと…さっちゃんが最初来てた衣装の柄はあるはずが無いんだよな。そこで考え付いた答えは、さっちゃん達はきっと違う世界の戦国から来たんじゃねぇかって。」
「…」
「うぅん、違うのって聞かれるとどう答えて良いのかわかんねーんだけど…設定、つか土台は日本の過去なんだけれどもそもそもの世界が別次元ってーの?ごめんなぁ口下手で…」
「いやいやとんでもない。…それにんまぁそれが妥当、なのかもねぇ…?あーもー俺様訳わかんなくなってきた!此方来た理由もわかんないし!」
んもー!とさっちゃんはソファーに深く沈んで小太郎ちゃんはごろりと俺の横に寝転がる。
「まぁまぁ、あんま悩みすぎると毒だぞー?そうさなぁ、此方の時の流れが遅いなら此方にいる間は休暇とでも思っとけよ。向こうは大変なんだろう?」
「…うん」
「俺にゃ戦国の時代なんか想像もつかないけどよ、お前らがゆっくり出来る場所が此処で俺の所に来たんなら俺はいくらでも世話焼いてやるよ、いくらでも甘えろ。いくらでも休め。好きなだけ相手してやるよ」
「…」
「…仁さん急にかっこよくなるの止めてよ」
「何を言うか、おにーさんはいつでもかっこいいだろが!」
けらけら笑って二人の頭を撫でればさっちゃんが照れた様にそっぽを向く。さりげなくさっちゃんが名前を呼んでくれた事に気を良くしてにやけてたらさっちゃんはそれに気付いたのか「いつまでもニヤニヤしないでよね!」と手を払われてしまった。えーと、こういうのなんつーんだっけ。…ツンデレ?
あと小太郎ちゃん俺の手で遊ぶの止めれ骨曲がる。
(ほんとに仁さんってば子供かと思えばお父さんみたいだよねぇ)
(もうなんなら父ちゃんって呼ぶか?)
(…)
(あ、やっぱ恥ずかしいから書かないで小太郎ちゃん)