「牛の肉とか俺様初めて食べるわー」
「くそっ、じゃがいもめ皮剥きにきぃんだよこのやろっ」
「…」
「小太郎ちゃん人参を紅葉型にしないの!いやすげぇけど!すげぇリアルだけど!つかもう遊んでるだろそれ!!」
買い物を終え帰宅、そして微力ながら俺と小太郎ちゃんもお手伝いをして早一時間。さっちゃんの手元でグツグツと音を立てて煮られているのはおにーさんの大好物のカレーである。スパイシーな香りは俺の胃袋を刺激して無意識の内に口の中に涎が溜まる。
そんな俺を差し置いて、忍組はルーを入れた辺りから口許を引きつらせ眉間に皺が寄っていた。
「ねぇ堺さん、作ってみたは良いけどこれ食べれんの?完全に泥じゃない!」
「おまっ泥とか言うな俺の大好物だぞ!」
「…」
「小太郎ちゃんひでぇ!!!れっきとした食い物だよ!」
顔をしかめながらさっちゃんがコンロの火を止めてご飯を盛った皿にルーを流し込めば俺の空腹はピークを迎える。
正直な所、さっちゃんが来るまで俺と小太郎ちゃんの食生活はお世辞でも良いとは言えなかった。雨が降ってなきゃ外にマックを食いに行って、めんどくさかったりした時は出前か庶民の味方カップラーメン。
面倒みてあげてるんだから食生活くらいちゃんとしてあげなきゃいけないんだけど、いかんせん料理が出来なさすぎてだな…。そのせいか小太郎ちゃんはファーストフードがすっかりお気に入りな様だ。…が、ピザは油が強すぎて除外らしい。
「食ってみりゃうめぇって!ぜぇったい!おにーさんが保証すっから!」
「えー…ほんとにぃ?」
「ぜぇったい!!辛いのが好きなら絶対美味い!」
「…」
「…あ、小太郎ちゃん辛いのダメだっけ」
「風魔辛いの苦手なの?超意外ー」
「小太郎ちゃんぶっちゃけ飯よりお菓子の方が好きだもんなー?ちょっち待ってて、確か冷蔵庫に前の苺用の練乳があった筈だ」
うにゅるうにゅると小太郎ちゃんのカレーに練乳をかけてやれば小太郎ちゃんの眉間にまた皺が寄る。…まぁ見た目的にはあんまり宜しくないよな、うん。でも食えよ?
「…」
「だぁめ。渡したら小太郎ちゃん練乳飲み干すだろ」
冷蔵庫に戻そうとしたら小太郎ちゃんが物欲しそうに手を伸ばしたのでそれをさらりとかわす。さっちゃんが小太郎ちゃんのカレーの練乳を少し舐めて顔をしかめていたのは見ないことにした。さっちゃんは甘いの苦手か…。
「…」
「すねたってダメー。アイス買ってやったろが」
「…なんかさぁ」
「ん?」
「堺さんってお父さんみたいだねぇ」
…奥さんも居ねぇのにこんなデカい子供いらねーよ。まじ嫁さん欲しい。
(あ!俺様かれー好きかも…!)
(だろ!?だろ!?んまいだろ!?)
(…)
(小太郎ちゃんも美味い?良かったなぁ!)