「ふぁーあ…ねっみ」

「…」

「んー、はよー小太郎ちゃん」


時刻は朝10時。ベッドの誘惑を振り切って起きればいつも通り小太郎ちゃんが先に起きててサンドイッチを作って待っていた。

小太郎ちゃんが此処に来てもう二週間を過ぎた。その間、何処で覚えてきたのやら小太郎ちゃんはサンドイッチやらフレンチトーストやら簡単な軽食を作れるようになっていて、おかげで俺の腹は空腹知らずである。


「今日のサンドイッチも大変美味であります」

「…」

「謙遜すんなよー」


素直に誉めれば小太郎ちゃんは何時でも常備しているホワイトボードに「御粗末様でした」と書いて小さく笑った(様に見えた)

それにしてもこっちでの平仮名もだいぶ小太郎ちゃんは上手くなった。今じゃカタカナも完璧らしい、今度はローマ字に挑戦したいと言っていた。


「さぁて今日も今日とて暇だなぁ」

「…」

「あ、もう食パンねぇ?んじゃ後で買いにいこっかぁ」

「…」

「俺ねー小太郎ちゃんのサンドイッチ好きー」

「…」

「どういたしましてー」


端から見たら独り言だが列記とした会話である。
朝飯と昼飯を兼用した様な時間に食ったせいで昼飯は要らないと判断した俺はポケットに車の鍵やらなんやらを突っ込んで出掛ける準備をする。それを見た小太郎ちゃんも一瞬でスウェットから外着に着替えた。


(いつ見てもすげーなー…ジャパニーズニンジャ)

「…」

「嗚呼ごめんごめん、いこっか…うおっ!?」


そして火の元も確認してさぁ行くぞ!
…って時に寝室から聞こえた大きな物音。突然の事にいつの間に刀を出した小太郎ちゃんに手を引かれ、背に守られながらゆっくりと寝室に近付く。


「な、なんか気配する?」

「…」


扉の前まで行って小さな声で問えば小太郎ちゃんは小さく頷いて人差し指を唇に当てる。そして次の瞬間に扉は開け放たれ寝室の中で金属音が数回鳴り響いた。


「小太郎ちゃん!?」

「…」

「なんで風の悪魔が…!?」


音が止んで部屋に駆け込めば悔しそうに床に横たわる全身ミリタリーなオレンジの髪をした男と、その男の上に乗って拘束するモデルファッションな小太郎ちゃんの姿。なんと言うかすげぇシュール。


「とりあえず、えーと、…知り合い?」


傾げられた首はどう説明したら良いのか、と困った様だった。

(困ってるのはおにーさんの方だぜ…)

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