晩飯も終わってゆったりとソファーに二人で腰かけてバラエティー番組を見る。小太郎ちゃんは箱の中で人が動く様が面白いらしく、内容はそっちのけでひたすら芸人と思わしき人物がローションまみれになりながら滑って転んでを繰り返す動きを目で追っていた(なにこいつ可愛い二回目)

(あ、そいや風呂入らんきゃなぁ)

番組が終わったのは10時頃。目が疲れたのか小太郎ちゃんはソファーの背もたれに寄っ掛かると軽く上を向いて背を伸ばしていた。そして彼の頭をぽんぽんと通りすぎさまに撫でてから風呂場に向かえば何も言わなくても着いてくる。そんな小太郎ちゃんは雛鳥のようだった。


「此処が風呂です。風呂って昔で何てーの?湯汲み?だっけ?わっかんね、まぁ家で入れる温泉的な、うん」


説明を自己完結でぶったぎり小太郎ちゃんを風呂場に押し込む。小太郎ちゃんの御息子様がでかく見えたのは気のせいだと腰にタオルを巻かせて自分の愚息を心の中で励ました。


「此処捻るとお湯が、こっちのは水、両方回して好きな様に温度調節してこのつまみでシャワー出して浴びて。そんで此がシャンプー、リンス、ボディーソープ。この二つが頭洗うので最後のは体専用」

ジャーッ、と試しにシャワーを出してやれば小太郎ちゃんが頷いたので、椅子に座らせて頭を濡らしてやる。

(すげー、根元まで真っ赤。地毛なのかこれ、すげー)

頭を濡らしながら小太郎ちゃんはお湯のつまみを弄ったりとなかなかに飲み込みが早い。そして小太郎ちゃん、風呂はだいぶ熱い温度が好きなようだ。俺の手が熱い。

「シャンプーはこうやって髪に泡立てんだぞー」

「…」

「目に入るとくっそ痛ぇから開けるなよー?」

「…」


そういった瞬間顔を手で覆った小太郎ちゃんに笑いながら洗い終わって泡を流してやると小太郎ちゃんは俯いてて疲れたのか首をパキリと鳴らした。


「んじゃリンスもシャンプーと一緒な、ただリンスは泡立たないから塗り込むだけ。ボディーソープはそこのふわふわした奴につけて泡立てて体をこする!以上!上がったら体拭いて着替えて来いな」


説明を終えて、ニュースを見て暫くしたら小太郎ちゃんが上がってきたのでドライヤーで乾かしてやる。俺は髪が短いから滅多に使わないけど小太郎ちゃんはなかなかに長いので乾かさないと朝絡まって大変だろうとあらかじめ出しておいた物だ。

さて、眠くなる前に俺も風呂に入ってしまおう。


「ねむ…」

「…」


風呂から上がる頃には俺の眠気はピークで、何気に疲れてたのねー、なんてぼやぼや頭の隅っこで呟いた。


「俺ソファーで寝っから小太郎ちゃんベッド、あー…布団?使っていいよ」

「…」

「えーやだよお客さんソファーで寝かすとか…」


首をフルフルと横にふってソファーを指差す小太郎ちゃんの意見を無視してソファーに飛び込もうとしたらがしっ、と腕を捕まれて阻止された。


「小太郎ちゃんはどうしても布団で俺を寝かせたい、俺はどうしても小太郎ちゃんを布団で寝かせたい、そういう事か…」

「…」

「んー…んじゃもうめんどくせぇから一緒にねんねすんべや」

「…!?」

「おぉう、小太郎ちゃんのそういうリアクション初めて見た」


ちょうど良い事に、愛車ハニーと同じく先走って買ったふっかふかのベッドは大の男二人で寝てもまだまだ余裕のある特大サイズ。値段はまぁ張ったが寝心地は最高なので今でも良い買い物だと思ってる自慢の一品。

もぞもぞと愛しのベッドに潜り込めば暖かい感触が体を包んでくれる。それだけで意識は夢の国に飛びそうだ。


「小太、はやくこいって」

「…」


意識をなんとか現世に呼び止めながらぼすぼすと隣の空いたスペースを叩けば観念したのかベッドが軋んで隣に人の気配がした。

そしてそこで俺の意識は飛んで波乱の一日は終わりをつげた。


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