背の高いビルの群れ群れ。コンクリートで整えられた道。対向車線の車。少ない緑。窓越しに見えるそれらに助手席の彼は小さく息を吐いていた。


「小太郎ちゃんキョロキョロすっと酔うぜ?」

「…」

「ほらもー言わんこっちゃねぇ!今窓開けっから待って、首とか出しちゃダメな」


時既に遅かったらしく。
軽く口許を押さえる動作をして眉間に皺を寄せていたのでとりあえず換気をしてまっすぐ前の景色を見るように指示した。

そんなこんなでデパートに到着。その頃には小太郎ちゃんも回復してて、そのままファッションフロアに足を運んだ。


「さて、服を選ぶ訳だがぶっちゃけおにーさんファッションセンスねぇぞ」

「…」

「…まぁ着れりゃ良いべやなぁ?」


首を縦に振った小太郎ちゃんにいくつか服を適当に持たせて試着室に押し込んだ。着方はまぁ解るはずだ。解んなくてもなんとなく着るだろ。平気平気。


「モデルじゃ!モデルが居る!!」

「…」


数分して出てきた小太郎ちゃんはそらまたきっちり着こなしていやがった。
黒地に白のラインが数本入ったシンプルなシャツ、黒のスキニージーンズ、目元を隠す様に被られた少しだけ灰色がかったハット。全体的に黒で纏められたそれは小太郎ちゃんの赤い髪をより引き立たせていて、なんというか自分のセンスが良くなったのかと錯覚させた。

(俺があんなん着ても絶対似合わねぇな)

一旦試着したのを全部脱がせてそのあとも何着か試着させていく。店員さんのセンスと言う名の助けも借りて普段着上下セットで4組、寝間着のスウェット2着、小物のハットとブーツとスニーカー、下着をいくつか適当に。

会計の時の店員さんの嬉しそうな笑みは忘れねー。さよなら俺の諭吉ちゃん。


「さて次は本屋に行くぜ」

「…」

「気にするな小太郎ちゃん俺も今視線が痛いから」


此処いらで一番デカいこのデパートは休日となると家族連れやデートのカップル、友達と来た女子高生ちゃん達で溢れかえる。そしてタイミングの悪いことに今日は休日。

行きは駐車場から来たのであまり人に見られる事もなかったが、店内で着替えて髪の赤いモデルファッションに身を包んだ男が居ればカッコいい人大好き!な女の子達の視線はたちまち釘付け。隣を歩く俺にはまた違った視線が集まる。

(チクショー俺だって好き好んでこんなイケメン野郎の隣歩きたくねーわ!)

至って普通な顔だと自負してる俺は視線から逃げる様に小太郎ちゃんの手を引いて本屋に向かった。握り返された手になんとなく照れたのですぐに離してしまったが。


(さぁ小太郎ちゃん、明日から平仮名片仮名の猛勉強です)


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