「んじゃーもうコンロと冷蔵庫はオッケーな?あ、コンロ使う時は換気扇回してね」
昼は適当にサンドイッチにでもしようとまずスクランブルエッグを作りながら説明をすれば小太郎ちゃんは俺の手元を覗き込みながら頷く。
卵に火が通りすぎない様に火を止めて食パンを取り出すと小太郎ちゃんは興味深く首を傾げた(やだなにこいつ可愛い)
「小太郎ちゃん小太郎ちゃん、君はこの食パンの耳…ってか茶色い所を切り取ってくれたまへ。あ、包丁がねぇか」
ちょっと待ってねー、と台の戸棚に顔を向けると同時に、背後から刃物が抜ける音と風が頬を撫でていった。
風に驚いて体の向きを変えたらそこには何やらやりきった顔の小太郎ちゃんと綺麗に純白になった食パンと切り離されたパンの耳。そして手には刀。
「あー…うん、あんがと小太郎ちゃん。すげぇ綺麗に切れてておにーさんマジ感激なんだけどよ、此処じゃそーゆー刀とか許可なく持ってると罰せられちゃうのな?だから、家の中ならともかく外じゃ絶対使わないこと。宜しい?」
「…」
少しだけ自分より高い頭を撫でながら困った様に笑えば小太郎ちゃんはすっと刀をしまって頷くと、刀は黒い羽と一緒に無くなってしまった。え?小太郎ちゃんてマジシャンなん?
(あとどうでも良いけど俺の首切った刀でパンはあかんて…)
言いかけた言葉はサンドイッチと一緒に飲み込んだ。